
リブロでお薦めした19冊
昨年12月から二冊の新刊があり、2月はその出版に関連した書店イベントが相次ぎました。
『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』つながりで、三島邦弘さん、江口宏志さんと行った「BOOK POTLUCK」。『かかわり方のまなび方』つながりで6名のゲストと過ごした青山ブックセンターでの一日「ワークショップってなんだろう?大学」。
もうひとつ、池袋リブロ本店の1階で約二ヶ月開催した「これからの働き方を考える50冊」も楽しかった。これからの働き方を体現する出版社、ミシマ社も絡んでくださって。(こんな感じ ↓ スゴ…)

で、フェアは終わったので、ここにリストを移します。(自分の推薦図書にはアフィリシエイツでリンクを張って、今後の書籍購入の一助にさせていただきます)
ミシマ社・三島邦弘さんは、この三冊。
『逆行』尾原史和/ミシマ社
『日の名残り』カズオ・イシグロ/ハヤカワepi文庫
『自分をいかして生きる』西村佳哲/バジリコ
ユトレヒト・江口宏志さんの推薦本は、この三冊。
『孤独の中華そば「江ぐち」』久住昌之/牧野出版
『Working』Bill Owens/fotofolio
『シェイクスピア&カンパニー書店の優しき日々』ジェレミー・マーサー/河出書房新社
江口さんとは今年1月以来。まだ短い間柄ですが、多くの人が彼のことが好きになる理由、肌で感じました。:-)
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さて僕、西村佳哲が推した本は、次の19冊。店頭POP用のテキストを付けて。
『移行期的混乱』平川克美/筑摩書房
このタイトルがいいと思う。書く前から決めていたようだ。働いて・生きている私たちが、いまどんな時期を過ごしてるのか?
『風の谷のナウシカ GUIDEBOOK 復刻版』徳間書店
この本の古い講演録で宮崎駿さんが語っている「ある仕上げ検査の女性」の話を読んでみて欲しい。「人に働いてもらう」とは、どういうことなのか?(自分がどう働くかではなく)
『ギフト 西のはての年代記 Ⅰ』ル=グウィン/河出文庫版
『ゲド戦記』のグウィンが、この社会を生きている私たちに宛てて書き下ろしてくれた全三冊の物語の、第一巻が文庫に!自分の力(ギフト)と、どう生きてゆくか。
どう働くか、どう生きてゆくかという前に、出来るだけ正確な現状認識をしようという一冊『移行期的混乱』の著者・平川さんは、いま文庫化を進めている『自分をいかして生きる』に解説文を書いてくださいました。昨日(4/1)届いた。とても嬉しい短文で……ありがとうございます。
そして、これ。
『ジョニー・B・グッジョブ 音楽を仕事にする人々』浜田淳/カンゼン
この本の姿勢に賛成です。本の中の、ある音楽教師(女性)とのインタビューは、ワークショップやファシリテーションに関心がある人にも響くものがあると思う。
『木のいのち木のこころ―天・地・人 』塩野米松/新潮文庫版
モノづくりについては、これ一冊でいいんじゃないでしょうか。(そんな一冊が何冊もあるが、中でも最も力強い)
『アキッレ・カスティリオーニ 自由の探求としてのデザイン』多木陽介/アクシス
〝もしいまカスティリオーニが生きていたら、「デザイン」を仕事にしているだろうか?〟という多木さん(著者)の問題提起に共感。僕は「している」と思う。むしろ今、でしょう。
『火の誓い』河井寛次郎/講談社文芸文庫版
「仕事が仕事をしています」という彼の感覚が、グッとくる。自分が、じゃないんですよね。自己実現とかそういう話じゃあないわけです。
『見仏記』いとうせいこう、みうらじゅん/角川文庫版
わけもなく惹かれるディティールや、たまらなさ、極めて個人的な嗜好も、ひたり尽くせば仕事になる。という必然的な奇跡の一例として見ています。面白いし。
『グラフィックデザイナーの仕事』平凡社
クラフトエヴィング商會やグルビ(伊藤さん)たちの働き方の話も最高なんですが、僕の白眉は祖父江慎さんでしょうか。存在の過剰性と無償性がすごい。
音楽、デザイン、モノづくりの領域をへて(「見仏記」はどうなの?>自分)、私たちの世界を映す鏡としてのファンタジーへ。
『ゲド戦記別巻 ゲド戦記外伝 』ル=グウィン/岩波書店 ソフトカバー版
第一巻『影との戦い』から読むのが普通だと思いますが、この外伝から入るのもいいと思う!というか、自分もそうしてみたかった。僕自身はゲド戦記の中で、いちばん読み返している一冊です。
『モモ』ミヒャエル・エンデ/岩波少年文庫版
モモは仕事を持っているわけでも、職業に就いているわけでもないけど、他の人にはない、彼女の「働き」があります。
そして、わたしたち「人間」や、日々の暮らしを通じて。
『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル/ハヤカワ・ノンフィクション文庫版
世界各地の神話を逍遙してきたキャンベルが、私たちが求めているのは「生きる意味」ではなく「今、生きているという経験」です、と言い放った大切な一冊。
『忘れられた日本人』宮本常一/岩波文庫版
文化的な記憶喪失状態にある現代の私たちのために、過去この国にどんな人々が、ものごとのあり方が、人と人のかかわり合いがあったのかを、日本各地を歩いて拾い集めてくれた、本当に夢のような本。
『語るに足るささやかな人生』駒沢敏器/小学館文庫版
人口の少ない、国道から少し離れたところに点在するアメリカのスモールタウンを訪ねて回った旅のエッセイ。あの国の片隅に、こんな暮らしや人々がいるのか…。ある町の小説家志望の女子中学生の言葉が、実に鮮やかです。
『春になったら苺を摘みに』梨木香歩/新潮文庫版
梨木さんが師事したイギリスの女性作家の下宿における、いくつかのお話(たぶん実話)。僕はなぜこの本を「働き方」のフェアに推してしまうのだろう? 初めてではないのです。
『おとな時間の、つくりかた』山本ふみこ/PHP研究所
山本さんは昨年お会いした、随筆家であり主婦。「自分」とのつき合い方、日々のただ中での身の置き方、ものごとのつづけ方など。教えられることだらけです。
医学書院の編集者・白石さんのつくる本は、おそらくケアの仕事に関連しない方々にも多く読まれていると思う。特別な事柄を扱った専門職の人たちのための本のように見えるかもしれませんが、そんなことはない。
『逝かない身体―ALS的日常を生きる(シリーズ・ケアをひらく)』川口有美子/医学書院
治らない難病にかかったお母さんの在宅介護を手がけたある女性の体験談なのですが、まず読みやすい!
自由意志で働くどころか、動くことも、意志を伝えることも出来なくなってゆくその傍らで、人間の存在価値や意味について、情緒に浸ることも、冷淡に割り切ることもないバランス感覚で、一緒に考えさせてもらえました。
『べてるの家の非援助論―そのままでいいと思えるための25章 (シリーズ・ケアをひらく)』浦河べてるの家/医学書院
タイトルの「そのままでいい」は自己肯定というより、本気で今この瞬間の自分の現実にかかわってゆく決意表明として読む方がいい、と思っています。
最後にマンガも。:-)
『ほしいものはなんですか?』益田ミリ/ミシマ社
ほんと読みやすいし、おもしろいし、しかもマンガだし。やんなっちゃう。子どもまで登場させて、下手するとあざとくなってしまいがちな素材をバランスよく着地させている。簡単なことではないな、と思いました。

池袋の本棚を訪ねてくれた方々も、ありがとうございました。リブロの担当・辻山さんいわく「これほど毎日、本が動く(レジにお持ちいただける)ブックフェアは自分たちにも異例」だったそうです。
by 2011/4/2