
Oct 23, 2019
神山の鍛くん(高三)の「ニューヨーク報告会」を聞きに、かま屋へ行ってきた。
中三のとき、神山でフードハブ・プロジェクトが立ち上がって、農園と食堂がスタート。料理の世界に関心のあった彼はその様子を見て、まちの高校への進学と「かま屋」でのバイトを決め、門を叩き、初の高校生アルバイトに。仕事は皿洗いからで、いつも洗い場にいた。
そのうち野菜を刻んだり、下ごしらえも任されるようになったけど、「こんにちは」と挨拶をしても「あ、はい..」という感じで、本人の世界の中にいる感じだった。
追って、かま屋にデイブというシェフが訪れる。彼はニューヨークのレストランの凄腕料理人で、シェフインレジデンス・プログラムで神山に滞在。一年と少々、山あいのまちで、身近な生産者との関係から生まれる料理を楽しみ、これからどう生きてゆくか考えていた。
この頃、鍛くんはデイブのディナーの片腕としてグリル(焼き場)を任されるようになる。最初のうちは結構怒られていて、僕らはカウンターから見守っていたのだけど、そのうちそんな姿も見れなくなって、堂々と調理場の一角を担うようになった。
鍛くんは、デイブとの出会いを通じて、外の世界に出てきた感じがあると聞かせてくれた。
5月になるとデイブはいったんアメリカに帰ることに。鍛くんは「ニューヨークに来い」と言い残されていて、その言葉通り、夏休みをつかって訪れた。
数軒の調理場で働き(英語はあまりわからない)、食べたことのない美味しいものをたくさん食べて、再会したデイブと野外食事会の料理を一緒につくり、手痛い失敗をして怒られ、凹み、でもよい形で終わって「仲直り」というのが最初の写真。よかったね。
今夜、彼は一時間半にわたり、ニューヨークで体験した調理場の空気や、ブワッと鳥肌が立った話、「そこに自分もいたい」と思ったことなど、飾り気のない言葉で聴かせてくれて気持ちよかった。
集まったまちの人たち(数十名・年齢幅有り)も、今しかない、彼の「高三の秋」に一緒に浸っていたと思う。みんなリラックスしていた。
ひとがあまり育たないまちと、よく育つまちがあったら、その後者で暮らしたい。
「成長」の定義は難しいけど、冒険教育におけるそれは明解だ。「安全な世界から少し足を踏み出してみる」。そして「自分が安心していられる領域が増えてゆく」のが成長で、それを絵に描いたような高三男子が、目の前で笑いながらマイクを握っている。
卒業後は一度、都市部の調理学校に通うそうだ。みんなに、自分の変化、見えてきた世界、まちでの残り5ヶ月をどうすごしたいかなど、屈託なく話していた。