
Jan 11, 2022
日本科学未来館から、「時間旅行展の巡回展示が終わりました」というメールが届いた。
「時間旅行展」は未来館の特別展として2003年に制作されたもので、同館のキュレーター・内田まほろさんが企画。会場設計は渋谷城太朗さん/ミュゼグラムで、私も二人と企画にかかわり、リビングワールドで展示物も一つ担当した。
オリンピック(2021)のエンブレムをデザインした野老朝雄さんも展示作品の一つを担当していた。ほかにも長谷川踏太さん(当時tomato interactiveに在籍)や、アーティストの鈴木康広さん(二ヶ月ほど前に談合坂SAでバッタリ再会)、GK TECH出身の島田卓也さん、Co-Labの田中陽明さんや音楽家の瀬藤康嗣さん、メディアアーティストの岩井俊雄さんやクワクボリョウタさん、SONYのUIデザイナーだった福田桂さんなど、まほろさんが声をかけた複数のアーティストが参画し、科学者の知見をめいめいの展示物に落とし込んだ。
まほろさんは、大手展示制作会社(たとえば丹青社、野村工芸、トータルメディアなど)任せの展覧会づくりでなく、「科学者×アーティスト(デザイナー)×日本科学未来館」のかけ算を形にしようと奮起していた。
元請けとして大手に入ってもらい、膨大な工程管理や予算管理をある程度任せる形でなく分離発注的に進めるわけだから、発注者の力量が問われる。まほろさんとミュゼグラムの担当・松村さんは、これでもかというくらい働いていた印象がある。大変な力仕事だったはずだ。
時代背景としてはまだチームラボが姿を現していない頃。国内におけるメディアアート黎明期の終盤で、彼女はアーティスト等の表現力を「サイエンス」と掛け合わせたらどんな仕事になるか。それを形にして、みんなで見てみたい気持ちがあったかなと思う。
デザイナーの大事な仕事の一つは「可能性を形にする」ことなので、その意味でまほろさんはこの展覧会のメインデザイナーだった。
最近どうしているかな?と思い検索して見つけたインタビュー記事によると、昨年秋に未来館を離れ、2025年オープン予定の品川の文化施設の準備室に責任者として就いた様子。ここにも昨年、それまでの仕事を離れたり新しい場に移った友人がいたと、少し驚く。
インタビューの中で「小学生から大学生までの四人の甥や姪と、週に一度は必ず会うようにしている」と話していて、彼女らしいなと思った。能動的な責任感が立ち上がる人なんだよね。知的で温かい。
未来館の連絡は別の人からのもので、「18年間に渡り日本および世界各国22ヶ所で巡回展示された」とあった。2004年の上海科技館に始まって、2018年の福井市自然史博物館まで。こんなに巡回していたんだな。すごい。
https://www.miraikan.jst.go.jp/resources/traveling-exhibitions/timetimetime/
「時間旅行展」の展示物にはただ見るだけでなく、触ったり動かすものが多かったので、それをここまで長年にわたり運用していたことに驚く。全部ではないだろうけど。
貸出から帰ってきた展示品の状態を確認し、必要な修理を施して…という地味な作業がくり返されていたはずだ。有り難い話だなと思う。
今日読んだ別のインタビュー記事に「いいものつくろうとかじゃないんです。それは無我夢中で。集中してるわけです、格闘してる」という言葉があって、いやそのとおりだと思ったけど、みんなそれをつづけている。
<Sayegusa Experience Talk> No.7 内田まほろさん
https://www.sayegusa.com/articles/no-7/