地上をゆく船、に乗る2泊3日

9月に筑摩書房から『ひとの居場所をつくる』という新刊が出ます。田瀬理夫さんという、ランドスケープ・デザイナー氏との出会いから生まれた本です。

Photo: Sakiho Sakai

「一名のインタビューで一冊」という本づくりは、自分には初めての体験でした。
ある人が生涯をかけて取り組んでいるなにかについて、きくことと書くことを通じ、その後を追うようにじっくり考えを重ねてゆける、とてもよい時間だった。二年越しの仕事になりました。
その田瀬さんが形づくってきた「クイーンズメドゥ・カントリーハウス」という、馬を軸にした「日本の中山間部における暮らしと仕事づくり」の拠点施設が遠野の山里にある。
ここを訪ねる二泊三日のワークショップをひらきます。
以下のページに目を通し、惹かれるものがあれば、どうぞお申込みください。
『いま、地方で生きるということ』(ミシマ社)のインタビューで、2011年5月に初めて訪ねたときの写真。

 ファシリテーター: 西村佳哲(リビングワールド)
 ゲスト: 田瀬理夫(プランタゴ、ノース)
 日時 : 2013年10月25日(金)〜27日(日)
       集合 10/25 12:45頃(遠野駅)
       解散 10/27 11:00頃
 場所 : クイーンズメドゥ・カントリーハウス/QMCH
 参加費: 30,000円+宿泊費30,000円
       └ 宿泊費は現地QMCHで精算
 定員 : 12名程度(最大15名)

 
F.L.ライトのタリアセン・ウェストをどこか連想させる、QMCH本館のダイニング兼ミーティング・テーブル。 Photo: Mitsuyo Waku

◎お申込み方法:
以下の事項をメールでお送りください。
*受付終了(9/26)
 ・お名前:

 ・連絡用メールアドレス:(複数可)

 ・連絡用電話番号:

 ・ご住所:

 ・ご年齢:

 ・性別:

 ・お仕事・専攻など:(差し支えのない範囲で結構です)

 ・お申込みの動機:(必須、ただし選考用途ではありません)
 送付先: qmch1310@livingworld.net

 
◎お申込み完了までの流れ:
・申込者には催行人数に達し次第ご連絡さしあげます。その後、数日以内に参加費をお振り込みいただき、確認をもって参加申込みの完了となります。
・全日程の参加が前提です。

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「地上をゆく船、に乗る」にむけて
この「地上をゆく船」という言葉は、9月の本のタイトルとして書いたものの、編集者さんとの打合せの中でボツになった案です。
でも田瀬さんたちが形づくってきた「クイーンズメドゥ・カントリーハウス(以下QMCH)」のありようを表現する上で、実にぴったり来る言葉だと思うんだけどなあ。というわけで、この二泊三日のタイトルとして復活させてみました。
まえがきに、自分はこんなことを書いています。
〝これからの暮らしと仕事を、ただの個人のサバイバルや、我慢くらべのような消耗戦にはしないで、ちゃんと文化を生み出してゆくものにするにはどうすればいいんだろう?〟
〝これからの日本で、どう生きてゆこうか?〟
〝あるランドスケープ・デザイナーの経験と言葉を介して、読み手がそれぞれの暮らしや場づくり、めいめいの船やその可能性について考えられる空間を、本の形でつくってみたい〟

この三日間は、その本のエクスカーションとして遠野のQMCHを実際に訪ねます。
田瀬さんや西村、そして各地から集まった十数名での滞在を楽しみながら、「これからの暮らしや仕事の場づくり」について、めいめいが自分の考えや想いを温める時間になればと思う。
使われなくなった牛舎(サイロ)に手を入れてつくられたアオゲラホール。キツツキがあけていた無数の穴は、小さな採光窓に。

QMCHには数頭の馬がいます。田瀬さんはインタビューの中で、こんなふうに語っている。
〝これからの地方の農的な暮らしを支える基軸の一つは、馬だろうと思っていて〟
〝新しい暮らしをつくりに、人が馬とともに帰ってくればいいんですよ〟(限界集落と称されるような場所であっても…という文意)
〝遠野でなく他の場所でも、「こんなやり方で住めるかもしれない」と考えてもらえる、現実に存在するモデルになるように〟

「馬」は、田瀬さんたちが考えるこれからの農山村の営みづくりの、キーテクノロジーのような存在。
「くう、ねる、あそぶ」を絵に描いたような、夏季放牧中の馬たちの暮らしぶり。働かない人の姿を見てイライラすることがある人は、ここでしばらく時間をすごしてみるのもよいかも?

詳しくは本で。というか、このワークショップで。
農村とか中山間部といった言葉を並べていますが、都市部における暮らしや場づくりはテーマ外なのか? 「これからの日本でどう生きてゆこう?」とあるけれど、対象地域種を絞っているの? と思う人がいるかもしれないけれど、そんなことはない。
たとえば本は一章が「遠野」、二章が「東京」で構成されています。でも、その子細をここで語るのは難しい…。
ひとつ書いておきたいのは、農山村でも都市でもどこであっても、これから私たちが生きてゆく世界のことを、政治や経済といった切り口にばかり泥濁せずに捉えてゆけるといいんじゃないか? ということ。
そのときに、ある種のランドスケープ・デザイナーの視点や、田瀬さんたちが重ねてきた試みは、手元を照らす灯りになると思えたので本を書いたし、このワークショップをひらく気になっています。
            *
本のエクスカーションとして企画しておきながら、その発売前(まだ誰も読んでいないうち)に募集告知するのは変な話なんですが、10月下旬の遠野が探訪にとても良い季節なので、このタイミングを外したくないと考えました。
どうぞ、お集まりください。
ゲストルーム。新館の設計は住宅設計の名手・永田昌民さんによるもの。質素ながらいい。背伸び感のない、あたり前の良さが僕は大好きです。 Photo: Mitsuyo Waku

早池峰山系の裾野のゆるやかな斜面に、ポッと人の居場所が与えられている。そのつくり方についても、ランドスケープ・デザイナーや建築家に限らず、各地で自分たちのくらしや場づくりに取り組んでいる人、これから形づくってゆく人たちと分かち合えたらと思っています。

 
2012年5月に書いた関連記事
>この世界に、人間の居場所を
 

by 2013年7月24日