向谷地生良さんと3時間半

12/23の祝日、13:30から17時。北海道・浦河にある「べてるの家」の向谷地生良さんをゲストにむかえて、3時間半のトークセッションをひらきます。
1月に奈良で3年ぶりにひらかれる「ひとの居場所をつくるひと」フォーラムに参加する(あるいは行けない)人たちにとっては、前哨戦というか別会場というか。
奈良はゲストあたり2.5時間づなので、くらべると少し余裕のある場になると思いますが、同じフォーマットで進めるつもりです。
福祉とか、社会的課題の解決であるとか、困り事をかかえる人々を支援する仕事にはりきって取り組もうとしている人たちにとって、向谷地さんが4年前に奈良で聞かせてくれた、「生きてゆく活力をその仕事から頂かない」「仕事からエネルギーをもらわない」という言葉は、受け取り方に戸惑いがあるのではないかと思います。
>気になる人は『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』(弘文堂)をどうぞ
 

「対ひと」という意味では、援助職に限らずどんな仕事も同じではないか。向谷地さんという稀有な光源を得て、それぞれの仕事や働き方を照らしてみない? という場です。

2010年1月の第2回「自分の仕事を考える3日間」会場でプレゼンテーションのトップ画面と向谷地さん。
 

 ゲスト: 向谷地生良(べてるの家)

 ファシリテーター: 西村佳哲

 日時 : 2014年12月23日(火祝)
     
 集合 13:15頃、スタート 13:30/修了 17:00

 場所 : 東京

 参加費: 3,000円
 定員 : 12名以上(お申込みの動向に応じ再検討します)
*『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』の向谷地さんブロックを事前に読んでおくことが、参加条件となります。
 
◎お申込み方法:
受付終了 以下の事項をメールでお送りください。
 ・お名前:
 ・連絡用メールアドレス:(複数可)
 ・連絡用電話番号:
 ・ご住所:
 ・ご年齢:
 ・性別:
 ・お仕事・専攻など:(差し支えのない範囲で結構です)
 ・お申込みの動機:(必須、ただし選考用途ではありません)
 送付先: 141223mukaiyachi@livingworld.net



◎お申込み完了までの流れ:
申込者には、催行人数に達し次第ご連絡さしあげます。その後、数日以内に参加費をお振り込みいただき、確認をもって参加申込みの完了となります。

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向谷地さんについて
5年ほど前、たまたま手にとった『べてるの家の「非」援助論』が衝撃的で、思わず一気に読み、「自分の仕事を考える3日間」(2009〜11年に奈良県立図書情報館で開催されたフォーラム)にゲストとしてお越しいただきました。
 「べてるの家」は、北海道の浦河という小さな町にある共同生活の場。約30年前、町の総合病院の精神科を退院した人たちが、牧師不在の教会に身を寄せて暮らすようになり、やがて日高昆布の袋詰めを行う共同作業所を手始めに、介護用品ショップや清掃作業の請負など、さまざまな事業をおこしてきた。
(中略)
 彼らが取り組んできたのは、精神病の患者として、治療の対象となり、社会との関わりを優しく断たれてきた人々の人生を、本人自身の手元に取り戻してゆく工夫の積み重ねだ。会社経営はその効果的な手段の一つだった。
(『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』より)

このときの向谷地さんとの2時間半は目眩のするようなひとときで、会場の300人の前で進行役をつとめつつ、僕は内容を咀嚼しきれず思考放棄していた瞬間が多々あったし(心は安心出来ていたので問題ない)、向谷地さんの話で頭がパンクしたのか、次のゲスト・セッションへの参加を放棄して奈良の町を逍遙していた…という人の声もいくつか耳にしました。
そのときの彼の言葉を、本から少し抜き出してみると。

 ここは本当に貧しい地域です。そこに日赤の総合病院があり、精神科のソーシャルワーカーを募集していた。
 精神科病棟は、この地域の絶望のシンボルでした。こんな町に暮らして、その上この病棟に入院するなんていうのは一番悲惨なことだと言われていた。
 私は、このすごい悪条件に魅せられて、就職を決めたんですね。

「悪条件で就職を決める」とは?
 私は大学の時、ソーシャルワークの実習先として、ある患者会を申請したんです。
 その実習を通じて学んだのは、困難な状況を変革してゆくのは、他でもない当事者であるということです。患者さん自身が、問題解決の能力をちゃんと持っている。疎外要因を取り除けば、人は直面している困難を自律的に解消していく。
 けど精神科に行くと、「眠れない」と言えばお薬をもらって、悩み事があれば話を聴いてもらって…という感じで。(中略)これは違うと思ったんです。この人たちに必要なのは、むしろ苦労するチャンスだろうって。
 もっと本質的な意味で困ったり、悩んだり、考えたり、人とつながったりする。そういったことを取り戻すのが、大事なんじゃないか。

ここ、精神病の患者さんの話ではなく、私たち全員の話のように響いてくるものがあります。
 その人たちと一緒に、失った苦労の醍醐味を取り戻したいと思ったわけです。それで、事業を始めた。
 (中略)
 一番大事にしているのは、「今日も明日も明後日もべてるは順調に問題だらけ」って(笑)。
 この順調さを忘れた時に、私たちはその中に生きられなくなるというか、いられなくなるというか。
 大切にしていることの一つは、仕事に人生をかけないということです。
 (中略)
 ここまで続けてこれたのは、仕事をしながら、なおかつ、その仕事に寄りかからない暮らし方や生き方をしたいと思ってきたからですね。
 

僕はこれらの言葉をこの数年間、折にふれ、スルメを噛むように何度も思い返していました。
そして『かかわり方のまなび方』の文庫化の話になった際、編集の喜入さんが「向谷地さんに巻末の解説文をお願いするのはどうか?」と投げかけてくれて、ワーオ!と思い、書いていただけることになり、それは既に現実化して先月から書店に並んでいるわけですが、その向谷地さんの文章の中に登場するのが今回の3時間半のひとつの切り口になるだろう「自分の助け方」という言葉です。
 
長文になりました。
ここまで読んで関心高い方、どうぞお申込みください。できれば早めに。反応が多かった場合、会場を取り直そうと思うので。
同日12/23は、朝から晩まで「ファシリテーションの教室」というプログラムを実施するのですが、その午後の枠を一般公開する形で、この向谷地さんとの3時間半を開催します。
 

by 2014年11月4日