永福の黒森庵
「自分をいかして生きる」のインタビューにご登場いただいた加藤晴之さんが家族でまかなっている永福町のおそば屋さん・黒森庵が、いま休業している。
*今年(2010)秋頃から再開予定との連絡あり。ブログも出来た様子。:-)
店の扉には、写真の紙が貼られている。奥さんの体調が少し悪いようで、治るまでしばらくの間、お店は休ませていただきますとのこと。
「女将が完治したあかつきには、ふたたび大騒ぎをいたします」という一言が嬉しい。ちなみにこのイラストは、娘さんが描いたものだと思う。右側のキャップをかぶっているリスが、加藤さんですね。
「自分をいかして生きる」を読んで、行ってみたけど、休みだった…。という方が時折おいでになるようなので、ちょっとここでも状況をお伝えしてみました。営業再開に気づいたら、トップページの片隅でもお伝えします。
もとい。黒森庵は、5人の子どもの上三名(娘さん)が花番を担っている。奥さんもお店に出ているのは混み合う日に限られるが、おもてからは見えない家事の基盤あっての、お店の操業なのだろう。
家族経営ならあたり前のことかもしれないが、この判断のスパッとした感じは、加藤さんそのものだな…と思った。
今年一月に奈良で開催したフォーラム「自分の仕事を考える3日間」の第一回に、加藤さんにゲストとしてお越し願えないか、ご相談をさしあげたことがある。
彼は「行きたいなー」とつぶやきつつ、「家族で話し合ってみます」とお答えになった。そして結論は「ごめんなさい」だった。みんなで話し合ったところ、やはり家族で過ごす週末の時間を優先したい、ということ。
自分にとって大切なもの、大事にしなければならないものがハッキリしていて、スッとそれを守る。そんな姿勢に、大人はこうでないとと思った。仕事のことで頭や気持ちが目一杯だと、あたり前の判断をし損なうことがある。少なくとも自分はあったので、忘れずにいたい。
先に触れたフォーラムの会場に一人の若者がいて、限界集落と呼ばれる場所を、自分の足で実際に回ってみたい。限界集落日本一周の旅をしたいんだ、と会う人ごとに語っていた。
友廣裕一さんというその彼は、フォーラムの翌月、東京の住まいを整理して、関越道の入口に数時間立ってヒッチハイクし、全国各地への旅に出かけた。
そして沖縄から北海道まで、旅先を人づてにゆだねながら約700名の人々と会い、寝食をお世話になり、各家の仕事を手伝い、「限界集落」という記号で呼ばれている土地の暮らしぶりを肌で感じて、半年後の8月頃その旅に一区切りをつけた。
>ムラカアリをゆく
彼がこの旅に出てみようと思ったきっかけの一つは、ある人がポロッと口にしていた、「東京が限界集落なんだよ」という言葉だったそうだ。
6月に、北海道・浦河のべてるの家を訪ねていた時、この旅の真っ最中の友廣さんと、偶然再会した。
べてる祭りのパーティー会場から外に出て、二人で少し話を交わした中で、彼はこんなことを聞かせてくれた。
「“限界集落”って言いますよね。でも実際に行ってみると、すごく元気で、最高にカッコイイおじいちゃんやおばあちゃんがいるんです。逆立ちしても適わないようなスゴイ人たちが沢山いて。
確かに数字をみれば危機的な状況だろうし、人がいなくなってゆくことの淋しさはあるにしても、それでも僕の実感では、限界っていう言葉は相応しくない。
で、日本の隅々に、本当に素晴らしい人たちがいるんです。おじいちゃんやおばあちゃんに限らず。働き盛りの素晴らしい人たちもいて。そんな人たちと出会って、話を聞いて、一緒に働いたり時間を過ごして、いちばん思っているのは『すごい人たちがいた』ということ以上に、『素晴らしい家族が沢山あったなあ』ということなんです。彼らの力の源は家族なんですよね。
要は人なんだ、という言い方がよくありますね。それはそうだけど、でも実は家族なんだよなあ、ということを、すごく感じています」(以上うろ覚え…)
家族。
来年1月に奈良で開催する、第二回「自分の仕事を考える3日間」では、前夜(1/8・金曜)のプレイベントとして、友廣さんを招いて、彼の日本一周の旅の報告会をしていただくことになった。
僕はとても楽しみで、フォーラムのお申込みは年内に定員〆切になりそうだが、友廣さんの報告会は予約不要なので、前泊で奈良に来る人は18時までに図書館にお越しください。お近くの方も、ぜひどうぞ。西村は聞き役をつとめます。
by 2009/11/19