スターネット:馬場浩史

>昨年・一昨年と、益子のスターネットで夏の展覧会を行いました。
リビングワールドの仕事展(2006)
「窓」展(2005)

が、今年はひと休みして、モノづくりに注力。
その代わりと言ってはなんですが、東京と大阪で、ミニ展示をひらきます。
 

スターネットでの展示を、夏の小旅行として楽しみにしていると言ってくれる方も多く、それは僕らも同じ。
昨年の「風を待つ部屋」は大好きで、いい時間と空間ができた。

風を待つ部屋(2006・益子) Flash PlayerSound design: kyo Ichinose

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制作風景。カーテンの素材・色を確かめに益子へ通った。(2006年 初夏)

オーナーの馬場浩史さんとは、また時期が来たらと話しています。
 

その馬場さんと西村佳哲が、2005年の展覧会の直前に行ったミニ対談があります。
西村は「自分の仕事をつくる」という本の取材を通じて知り合っているのですが、この対談はその8年後に交わされたもの。以下にその一部を再掲載します。(協力:安藤 聡、晶文社)

スターネットをご存じで、働き方に関心のある人には、興味深い内容かもしれません。

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馬場浩史さんと、リビングワールドの西村たりほ(2005年 春)

 
自分の居場所をつくる
馬場浩史 × 西村佳哲

(前略)
馬場浩史 やりたいことは、一言でいえば「衣食住のクリエイティブな自給自足」ということです。

──「やれたらいいと思う」とか「やってみたい」と言う人はたくさんいます。でも、実際にする人は少ない。ほんとうにそれをやってしまうというのは一体どういうことなんでしょうね。

馬場 自分の居場所をつくっているんだと思う。居場所がないわけですよ。自分の居場所がこの社会にない、と感じている。だから自分の居場所ぐらい自分で作ろうと(笑)。
どうもね、ここから外に出ると居心地が悪くて悪くて、仕方がないんです。

──何歳ぐらいから、そういう心持ちに?

馬場 むかしからそうだったと思う。近年さらに激しくなっていますが、20代、トキオクマガイとの仕事で世界を飛び回っていた頃も、大事なCDを何枚かと、いちばん気にいっている自然素材のブランケットはスーツケースに畳んでいつも持ち歩いていました。

どこへ行っても自分の場所を作るわけです。いつも小さな自分の場所づくりをしていて、それがいまちょっと広がっているということだと思うのですけれど。

──居場所づくりに、終わりはないのですか?

馬場 うーん。ないんでしょうね。だからね、他人(ひと)の仕事はあまり受けたくない。
たとえば、店鋪のプロデュースにしても、外側だけ作っても仕方がない。1年経過して再訪するじゃないですか。がっかりすることも、時にはあるわけです。
そんな経験を何度か重ねていると、中身まで自分で見れないものはやってはいけないなと。やってますがね。やってますが、かなり近い関係での仕事に限っている。

「自分」の切り売りになってしまうような仕事は、すごく辛いことですよね。

東京で事務所をやっていた時代、企業から頼まれる仕事には、時代を先取りしたエコ関連のものも多かった。
自然が大事だとか、ローマテリアルが大事だとか、手仕事が大事だとか、そういうことを考えながら関わるわけですが、けっきょくは消費されて消耗して終わってしまう。それは「自分」の切り売りですよね。

どういうことがテーマであれ、これは一緒だなと思ったんです。最終的には、経済効率のための何かになってしまう。
オーガニック・ブームもそう。循環型とかなんとか言っていますが、けっきょく経済効果のために使われている。言葉がひとり歩きしている割には、実体がどこにもないじゃないかと思うわけです。

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ポツポツ光っているのは「風灯:Solar」。スターネットの山の木々に展開し、夕暮れに灯りはじめる。益子の夏の風物詩のひとつに。(2006年 夏)

──ほんとうにやってしまう人とやらない人の違いは、何だと思います?

馬場 捨てるか、捨てられないかじゃないですか。自分がいま持っているものを捨てないと、やはり新しいところには行けませんよね。そこにはリスクが伴う。

たとえば僕が東京からここに移った。これまでの仕事は一切なくなるわけです。自分のアイデンティティみたいなものも、この場所では崩壊していく。といったあたりで腰がひけて、着手できない人が多いのではないですか。生活がイメージできないとか。

──何かを選ぶことは、同時に捨てることでもある。自分がつくったものに固執せず、捨てられる理由は何でしょう?

馬場 それしか残された可能性はないと思うから。東京ではけっきょく消耗して──東京という言い方はよくないのですが──、そういう社会のなかで消費されて消耗して生きていくのか、自分の理想に叶うものを、理想的な場所を見つけてつくっていくのか。
僕のなかでは、もうそれしかチョイスがないわけです。

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馬場さんのパートナーの和子さん。益子に移った頃は、東京でのファッションデザイナーとしての仕事を整理しきれず、一年くらいは週末に通う暮らしだったそう。(2005年 春)

お金は必要なときに自分の必要に応じて、作ればいいわけでしょう。スターネットを建てるときも一文無しですよ。最初は持っているお金を全部集めて、たしか150万円だったかな。これだけあると思って、それを地主さんに持っていったわけです。

家を建てる時も、いくらあるかを確かめる。でも十分なお金なんてない。なら、左官仕事を外注するのを止めて、その部分を自分でやろうと考える。粘土なんか安いわけです。内側はぜんぶ土壁で塗ったのですが、4トントラック一杯の材料が7万円ぐらいだったと思う。職人に発注したら、たぶん何100万円とかかる。足らないところは自分で埋める。

お金は、必要に応じて。どうしても必要なときは何日かいなくなって、出稼ぎで仕事をしてくるわけです。デザインとかプロデュースとか。企業の仕事というより、個人相手の仕事です。
30代の中頃は、東京の事務所で企業のCIとか、代理店の仕事もやっていました。新しい事業の立ち上げもやっていましたが、やりたくてやっていたというより、食べるためにそういう方向になった。でも企業との仕事は、自分の性格からいっても限界だなと思ったわけです。

──逆に日本では、いろいろな仕事が企業を介して流通しすぎているように思います。

馬場 そうですね。その結果、やっても薄まってしまうというか、アイディアとか出してみんな喜んでくれても、それが商品化されないとかね。
それではエネルギーを費やす意味がない。商品化する段階でいろいろなフィルターを通って、けっきょく違うものになってしまう。けっきょく、お金だけの仕事になってしまうように感じられて。それで、僕はやらなくなった。

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リビングワールド「窓」展の様子(2005年 夏)

(中略)リビングワールドのお仕事には前から興味を持っていたし、是非ここで紹介したい。
益子という場所で、ああいう展示をするのはリスキーかもしれません。突然ですからね。今回どこまで新しい接点が生まれるかわかりませんが、ともかく1回やる。

できれば、2回3回とつづけてほしいと思っている。そうしてこそ、最終的にやった意味が出てくるのだと思う。互いが腑に落ちるまで、手入れをしながら、「あっこれだ」と思えるところまでつづけることが大事だと思うのです。
やる・つくる側だけではなく、観に来る側もあるわけですから、そこがちょうどいい関係になっていくまでね。(2005年 春)

            *

スターネットでリビングワールドに出会った方々との関係を、大事にしてゆきたい。
今年はお休みしますが、またいつか面白いことをやってみたいと思います。

お時間があれば、東京や大阪の展示にも遊びにいらしてください。(LW)

むこう数ヶ月のスケジュール
 

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by 2007/6/8