お薦めの本@kurkku
kurkkuとリビングワールド展で、何冊かの本に、私たちが書いた推薦文を添えてみました。
砂時計シリーズからサウンドバム、銀河系の立体模型など、さまざまなものについて。
つくりながら読み込んできた、素晴らしい本の数々。
以下に、推薦文を再録します。:-)
小さな塵の大きな不思議
ハナ・ホームズ ¥2,940
小さすぎて目に見えないけど、一息ひといきの呼吸をつうじて、私たちの体内に取り込まれているさまざまな塵の話。
アメリカには、その時々の最新の科学的成果を、人々にわかりやすく伝える仕事の伝統があるように思います。C.セーガンの「コスモス」しかり。これもその良質な一冊。宇宙からの塵の話は、P34から、二章をさいて詳しく紹介されています。
太陽をかこう
ブルーノ・ムナーリ ¥1,500
光はものの形をあきらかにします。では、その光の源の形は? 眩しすぎて見えない太陽を、ヒトはどう見てきたのか。そして私たちはどう見ている? タイトルだけで、もう十分満足できてしまいそうな一冊。「なにか」を指すその指先に、情報デザインの出発点がある。
空の色と光の図鑑
斎藤文一(文)、武田康男(写真) ¥3,045
朝に、昼に、夕暮れ時に、そして夜に、さまざまな色合いの光を見せる「空」。その色と光の仕組みをわかりやすく伝える良書! 写真が素晴らしい。ナショナルジオグラフィック的な強い絵ではありませんが、撮った人がなにを見ていたのかがよく伝わってくる。仕事量にも圧倒されます。
こういう本を見ていると、私たちは作者が感じ・楽しんだ世界の、ほんのお裾分けを、本という形でいただいているんだなと思う。
いのちとリズム
柳澤桂子 ¥693
日本科学未来館の時間旅行展の制作に関わっている最中、生物時計に関するさまざまな本を読んだのですが、この本の第一章「天体の動きとリズム」の透き通った文章には、目が開かれた。なるほど、私たちは文字通り「太陽の下で」生きているんですね!
第七章のはじまりも凄い。「メクラウナギの心臓を取り出して、細胞を一つひとつに分けると、その細胞はそれぞれ勝手に拍動するが、互いに接触させると同調が生じる」。生命ってなに? 私たちの中で脈打っているビートは、いったい何ものなんだろう。
人間の土地
サン=テグジュペリ(訳:堀口大学) ¥580
「星の王子様」のサン=テグジュペリ。文章を読み進めると、写真家の星野道夫さんの随筆に近いものを感じます。それは、世界の果てから、書き手以外のすべての人に宛てて書かれた手紙のようなトーン。空路が開拓される前の、冒険家的な郵便飛行機乗りの一人の体験談が、人間の存在の本質に迫ってゆく。
自然のパターン/形の生成原理
ピーター・S. スティーヴンズ ¥3,975
グラフィックデザイナーの東泉一郎さんが教えてくれた、大切な一冊。書かれている内容には、数学的な教養が求められる部分もあり、決して簡単ではありません。けど写真が豊富で、ページをめくってゆけばこの本が指さしているところ、あらゆる自然をつらぬくデザイン原理の存在が感じられると思います。こういう本が絶版にならないのは嬉しいけど、いつそうなるかはわからない。
愛するということ
エーリッヒ・フロム ¥1,325
人がその人生を通じて手に入れたい、あるいは触れつづけていたいもの、いちばん中心になるものはなんだろう? それは愛だ、と語る言葉に時々出会います。そうかもしれないと思うし、あまりに大事な話で、言葉にしたくないとも思う。
この本はそれを言葉にしているわけですが、生涯を通じて何度も読み返したいと思える。そんな一冊です。
イルカと海に還る日
ジャック・マイヨール(訳:関 邦博) ¥1,995
ジャック・マイヨールという人間が、その仕事とみずからの身体を通じて、人間の可能性をどう感じ・考えていたか?
スキンダイビングの向こうにひろがる、彼の思索に触れることのできる本。100mの世界記録樹立時の様子は、前半に登場します。
潜る人 ジャック・マイヨールと大崎映晋
佐藤嘉尚 ¥1,650
親日家としても知られたジャック・マイヨールですが、彼と日本を結び、伊豆半島での世界記録樹立をささえた大崎映晋の存在は、あまり知られていません。
水中撮影分野におけるパイオニアであり、海女文化の研究者であり、東北地方の大崎一族の末裔であり。二人の出会いを切り口に、並行して進む二人の人生が描かれているこの本。フリーダイビングの世界記録に至る前の、マイヨールの出生や結婚、さまざまな職業遍歴もていねいに描かれています。思想でなく、彼の生き様を読める本。
ジョン・ケージ 小鳥たちのために
対話集 ¥1,900
ジョン・ケージは20世紀の音楽と芸術に、大きな波紋を与え、1992年にこの世を去ってしまいました。
この本のやり取りは一見難しい禅問答のようですが、自分の興味と可能性をできる限り形にして生きた、ひとりのチャーミングなおじさんだったのだろうと思う。P256からの「ジョン・ケージ年譜」が楽しい。
せいめいのれきし
バージニア・リー・バートン ¥1,680
「ちいさいおうち」で馴染み深い、バージニア・リー・バートンの最後の本。私たち一人ひとりの人間は、Only oneで、同時にOne of themにすぎない。時間の尺度を変えて、この地球の生命の歴史をたどると、それが極端な形でみえる。
劇場をフレームに据えた構造も秀逸で、イームズの「パワーズオブテン」に通じる明快さを持っています。デザインを学んでいる学生さんは、ぜひ読むべし(買うべし)。
パワーズ オブ テン
フィリップ&フィリス・モリソン、イームズ夫妻 ¥4,077
10の25乗メートルの宇宙からマイナス16乗の素粒子まで、スケールの異なる世界をひとつづきに見せる、チャールズ&レイ・イームズの映像作家としての代表作「POWERS OF TEN」の写真版。
本は、映像とはまた違う仕上がりになっていて、なお素晴らしい。もっとも引いて見たときの宇宙の絵のど真ん中に、一つの原子核が置かれていることを思うと、その情報構造の秀逸さにため息が出る。P120の「心と目のための旅の手引き」は、映像版を好きな人にも一読をすすめたい章。
宇宙 ─そのひろがりをしろう─
加古里子 ¥1,470
私たちの指先からはじまり宇宙の果てに至る、見開き30ページの探検旅行。「パワーズオブテン」の別の形の絵本。写真じゃなくて絵、というところがまた素敵です。作者の加古里子さんはこの一冊を書く・描くために、25年間勤めた会社を5年間退き、アトリエまで構えたとか。そんなエピソードも紹介されている作者解説ページを、ぜひ読んでみてください。最後のページにお写真も載っています。
他の人にはまかせられない、自分の仕事をした人の仕事。
立体で見る星の本
杉浦康平、北村正利 ¥2,415
突然ですが、海でダイビングをしていると、いつもと違う感覚が生まれることに気づく。三次元の感覚です。私たちは既に三次元的な空間で生きている…と思っているけど、実は極めて二次元的。重力で地表にペタッとはりついているし、天文にせよ物理にせよ医学にせよ、本に書かれる世界の記述は二次元的な模式図に変換されたものが多い。でもこのあと人類が本格的に宇宙に出ていったら、三次元的な世界認識の方が、むしろ一般的になるんでしょうね。
情報デザインの草分けでもあるデザイナー・杉浦康平さんの愛情が、たっぷりつまった一冊。夜空に並ぶ星には、それぞれ奥行きがある。3Dメガネがついていて、星空が立体的に見えます。
ビヨンド/BEYOND
マイケル・ベンソン ¥5,880
「Full Moon」につづく、NASAの素晴らしい蔵出し! 60年代から現在までの、太陽系の星々の姿がおさめられています。ポイントは望遠鏡でなく、探査衛星で撮られた写真群が豊富に収録されていること。これは人類の新しい目です。グッと近づくと、土星はこんなふうに見えるのか。衛星の影はこんなふうに前をよぎるのか…。
うそやごまかしのない「本当のこと」への接近という、科学の素晴らしさが体現された、大判のビジュアル本。なんど眺めても感嘆しちゃう。すごいですよ。
百億の昼と千億の夜
萩尾望都 ¥740
1965年に発表された光瀬龍のSF小説を、萩尾望都がマンガ化したもの。なんと、週刊少年チャンピオンで連載されていた(1977~78)。原作も素晴らしいがマンガ版も名作。宇宙の外側には、なにがひろがっているのか。絶対的な力の下で、私たちはどう生きてゆくのか。
当時マンガは、表現文化としてまだあまり評価されていなく、書き手も編集者も、ただただ必死に取り組んでいました。あの時期ならではの、かけがえのない結晶のひとつです。
皆既日食ハンターズガイド
STUDIO VOICE別冊 ¥1,800
上空から眺めると、皆既日食とは地球に落ちた月の影。年に1縲怩Q回程度の割合で、その影が地表を通過するのですが、その大部分は海です。さらに地球は、人があまり住んでいない土地の方が多い。その影がたまたま通過する町や島をめがけて、全世界の人々が集まってくる。そして月の影の中に入ると世界が一変するのですが、これは行ってのお楽しみ。
2009年の夏、中国から奄美大島にかけて皆既日食が生じます。その早すぎるガイドブック(2006年刊)。「ピンホールカード」も併せてどうぞ。
モモ
ミヒャエル・エンデ ¥1,785
「時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子の、ふしぎな物語」。時間とは命であり、命が輝くには、私たちが時を生きる必要がある。ただ生きているだけではなく。
ドラム・マジック
ミッキー・ハート ¥1,785
表紙で大損している気のする一冊。60~70年代を象徴するロックバンド「グレイトフル・デッド」のドラマー、ミッキー・ハートによる、ビートと打楽器をめぐる探検報告です。人間にとってビートとはなにか。国境や文化を越えて、人の心が震え・動き出す、その中心にある響きはいったいなんなのだろう。アフリカや東洋へ、インドのタブラー奏者のもとへも。「なにか本当のこと」を探求してゆくその姿と思索は、ロックにもドラムにも、極端な話音楽に興味のない人にも感じ入るものがあると思う。デザインショップのテーブルに置いてあります。
旅の絵本
安野光雅 ¥1,365(各冊)
なにかに気づいたり、発見したり、見いだすことの喜びは、その人自身のもの。子どもの頃、文字がひとつもないこの本の中で、豊かな時間を過ごした人がたくさんいるのではないかと思います。もしまだの方がいたら、今からどうぞ!
by 2007/9/30