プライシング

わたしたちは、思い付いて・つくって・それを届ける(あるいは自分たちも使う)、この全体をやりたくてモノづくりをしています。

多くのデザイン事務所は請け負いの仕事が中心で、クライアントから依頼を受けて、腕をまくる。

でも、クライアントと一緒につくってゆく仕事と、自分たちが「これ!」と思うものをつくって販売までしてゆく仕事の両方を、半々ぐらいの割合でやりたいと思ってリビングワールドを始めた。
会社にして7年目。のんびりやっていますが、仕事の配分は、今ちょうどそんな感じです。
 

専攻や時期は違うけど、わたしたちは二人とも美術大学のデザイン科で学びました。
そこで教わった内容は、基本的に「つくり方」です。つくったモノを人々にどう届けるか?といった授業は、美大のデザイン科にはほぼありません。というか、ない。

自分たちでつくって(ここまでは慣れている)、さらにそれをどこで・どう販売するのか、求めてくれる人たちとどうコミュニケーションをとってゆくのかといったことについては、ずっと手探りです。

話がそれるのだけど、以前友人のカフェで働いていた若い女の子がすごい何でも出来る子で。ホールで接客も出来て、調理もできて、仕入れもできれば会計も出来るし、煤だらけの真っ黒なナベを新品同様にすることもできる。なんでもやるし、できちゃう。

ちょっとビックリして「前のバイト先で学んだの?」と聞いたら「学校で」という。ある調理学校の卒業生だったのですが、ぜんぶ授業でやりますよ、とこともなげに語る。
それを聞いてちょっとショックでした。
つまりその調理学校は、自分の店をひらけるような人間を育てようとしている。あらためて比べてみると、わたしたちが受けた教育は「つくり方を憶えたら、企業かデザイン事務所に勤めて頑張ってね」という感じでしょうか。

もとい。そんなわたしたちも、サイトにSHOPページを設け、いくつかのお店に卸すなど、やや本格的な販売を始めるようになった。でもまだ2年ちょっとですから…そう、まだ駆け出しです。
 

いやしかし、どんな人たちも最初は手探りなんですよね。だからそれはそれでいいのだけど。
ご注文のメールが入って、お返事を書いて、パッキングしていると…なんというか、商品というより友人に贈るプレゼントのラッピングをしているような感覚になることが、ままある。

いやこれは美化しているんじゃなく本当にそんな感じで、別の表現でいえば、石焼き芋を新聞紙でくるんで手渡しているような。そんな感じでしょうか。
たまに急ぎの方で、永福町の駅まで受け取りに来てくれる人がいます。品物を渡してお代金を受け取っていると、ほんとうにそんな気持ちになる。

それが嫌なわけでは全くない。けど、これを事業とか商売とは呼びがたいな…という気持ちがあります。弥生販売(有名な販売管理ソフト)も買ってみたけど、使い心地が嫌ですぐ帳面に切り替えてしまったし。

自分たちの会社なんだから、使いたくない道具をわざわざ使う必要はないし、ストレスがなければ無理に効率化を図る必要もない。
等身大でまったく構わないのだけど、焼き芋感覚では済まない局面もある。
 

その一つがプライシングです。おおやけの値段を付けること。
量り売りでその都度「200円でいいです」とか言ってられないわけで、でも長くなってしまったので、この次に。

>つづく

by 2009/4/24