検品(中国について)
先々週から行っていた検品作業が、今週をもって終了!レーザー加工前のガラスキューブが中国から届いたので、その検品とクリーニングを行っていました。
作業中の西村たりほ。リビングワールドのAD。
1,000個はなかなか取り組み甲斐のある量で、友人の関泰子さんも2日目から助太刀として参加。
三人+レーザーマーキング会社の社員さんで、小箱から出して、キューブの六面をクリーニングして、傷や状態を確かめて…という作業を淡々と。千里の道も一歩から。
中国から届いたガラスキューブ入りの山積み段ボール箱。透明度の高い光学ガラスは国内で製造すると非常に高額。アクリルなら安くつくれるが、紫外線による劣化・変色が生じるので一生モノとは言い難い。なのでガラスで。
今年の初めは、6月にこうして検品作業をしているなんて思いもしませんでした。
実は「太陽系のそと」は、70mm角のミニサイズ版どころか、120mm角版の方も製造中止になるところだった。要求レベルが高すぎたのか、製造会社の社長さん(以下Kさん)が、一度音を上げてしまったんです。
その後、他の会社を探して試作もしたけれど、良い品質でつくれるところは見つからなかった。
たまたま再び膝を詰めて話す機会があり、「もう一度やってみましょう」と言っていただいたのだけど、冬の間は「もう駄目かもしれない」と思っていました。
日本でレーザー加工を行うガラス素材は、上海から車で半日ほどの場所にある工場でつくられています。
Kさんの会社がクリスタルの内部加工事業に着手した約7年前、彼自身が中国のガラスメーカー数社に足を運んで、見て回って選んだ。毛沢東のガラスの棺をつくった工場でもあるという。
ガラスは固いけれど、実はとても粘性の高い〈液体〉です。表面張力で形を保っている水の固まりのようにも見える。
継続が見込めなくなった1月頃、他のガラスメーカーを試して取り寄せてみたこともあるので(結果は芳しくなかった)、この工場の仕事の良さはよくわかる。
表面の磨き上げもいいし、角辺の面取りも指定通りの細さで抑えてくれている。
何度お願いしても、ディティールをちゃんとやってくれる工場がなかなかないということを、この半年で知りました。
実は風灯:Solarの3rdバージョンの製作も、昨年の秋に同じようなところでつまずいた。香港のメーカーと試作品づくりを重ねていたけど、対応がひどくて、日本側の代理人が音を上げてしまった。「中国を相手にこのレベルのやり取りは無理です」と。
中国でモノをつくろうとすると、日本側の担当者や代理人はあきらめたように「中国の人には言っても無駄」と言う。でも、本当にそうなんですか?
Kさんもそう言う。「彼ら(中国の製造者)は口では『はい』と言っても、平気な顔で要求水準に満たない品物を送ってくる。返品コストの方が高くつくので戻しが発生する可能性は低い、と足元を見られているんだと思う」と語る。
でもわたしたちはつくり手たちと会ったことがまだないので、彼らと直接話を交わしてみたい。
話せば通じる部分があるのか、どうなのか。
それにしても、いい仕上がりのガラスキューブ(ホクホク)。今回はとてもうまく進んでいる。その違いは何によって? Kさんが香港出張時に、工場担当者も集めて話をしたことが効いているのか。工場長はガッツポーズをして見せたと聞くけど。
実際、中国製の製品の多くは、どこかボンヤリしていると思う。Patagoniaのラインナップも、中国製のものが増え始めた頃、その服を前にしても目が覚めないというか、服自体がどこか眠ってるような、なんだかあまり気持ちのよくない存在感を放っていた。
先日アウトドア用品店に行ったら、Chacoのサンダルが同じ「感じ」になっていて、店員さんに確かめたところ今年から中国製に切り替わったという。
アメリカ製品の仕事の良さを残しているメーカーは減っていて、GREGORYも一部を除いてもうアメリカでつくっていない。…アメリカの話はちょっと脇に置いて、ともかく気になるのは中国製の品々が醸し出しがちな、ヌルッとした「眠い」感じです。あれはどこから来ているんだろう。
中国は世界の工場として働いてきた。
どんな感覚で働いてきたんだろう。少なくとも、剣持勇が商工省で頑張っていた頃の日本のつくり手たちのそれとは違うんでしょう。
ただ、その中国に仕事を出している側のメンタリティも気になる。どこか見下してる感じがするんですよね。
どんな仕事も、お金を出している側がエライなんてことはないし、その逆もないはず。お互いに「つくっていただく」「つくらせていただく」という気持ちがあって初めて、製造とか生産といった言葉が似合わない、生まれてくるようなモノをつくれるんじゃないかと思う。
「理想論」と一蹴されそうな気もするので、中国の工場へ行って彼らと直に話を交わしてみたい。
今回は行けなかったけど初回の1,000個を売り切って、追加発注を行う、そのタイミングで中国に行こうと考えています。
30個に一つぐらい、このような小さな傷やカケを生じているキューブがある。面取り幅を細く指定しているので生じやすい欠品。これらにも銀河系を造形して店頭サンプルにあてる予定。
で、中国で彼らと話す時のためにも、仕事の質にちゃんと触れておきたい。今回の検品作業にはそんな目的がありました。
素材を発注しているのはKさんの会社なので、本来的には彼らの仕事です。でもやらせて欲しかった。素材がどんな状態で届いているのか、直に触れたかったから。
結果として質の良さも感じたけど、もし10人働いているとしたらその中に少なくとも1人、手袋もしないし結構汚い仕事をする人がいることもわかった。(笑)
素材に接していると、それをつくった現場の様子が伝わってきます。
こんな汚れが付いているものがたまにあって、アルコールなどできれいにする。単純作業のいいアクセントになるので、見つけるとやる気も出たりして。
Kさんとその会社の人たちは「発注者が検品に来たのは初めてですよ」と驚いていた。彼らの机を借りて、マイペースで検品するわたしたちは迷惑でもあったんじゃないかと思うけど、互いに新鮮で、一緒に食べる昼ご飯が楽しかった。ありがとうございました。
で、いまはレーザーによる銀河系の内部加工が始まっており、国内で最も経験年数の長い職人さんが手がけてくれています。
先のChacoのサイトにも書いてあったけど、モノをつくるというのはゴミをつくることだ。資源を掘り出して、将来のゴミをつくっている。
なら、それを存在させることの意味に少しでも厚みを持たせたい。
#販売価格はまだ決まっていません。発売時期は8/20以降を予定。
16,500円(本体価格15,000+消費税)
> STORES.jp/太陽系のそと|銀河系 palmtop version
by LW 2009/6/20