洋上で日食を観て

私たちは20日に横浜港を出て、硫黄島沖合いへ皆既日食を観に行っていました。船にはNHKや国立天文台の方々が一緒に乗っており、観測船さながら。

日食もさることながら、南の海の旅が印象に残ったので、少しご紹介します。

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16時に横浜・大桟橋から出港。曇り。
浦河水道を抜けて東京湾を出たあたりから、船の揺れ方が外洋のそれに。
時化てはいないけどゆったりと大きく揺れる。船酔いの危険を感じながら、大島を右手に夜の太平洋へ。

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翌21日。丸一日かけて、ひたすら南下。島影のない海。どんより雲っている。明日は晴れた海域にたどり着けるんだろうか。

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夜、遠い水平線に、同じ方向へ進む客船の灯りが見える。たぶん他の日食観測船です。
 

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3日目、22日。
朝起きてみると、こんな海に着いていました。
ほぼ凪。海面のところどころに、微かな気団が動いている様子が見えます。

日食の第一接触は10時頃。8時前ぐらいからデッキに出て、観測の準備を始める人々。

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10時半頃。この旅に私たちを誘ってくれた夜旅作家の中野純さんは、ピンホールをたくさん空けた傘を持ってきていた。影の中に、半分ぐらい欠けた太陽が見えます。

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そして皆既日食。(NHKの中継映像
水平線が360度夕焼け状態になる。これを観に来たのだけど、時間は6分ぐらいしかない。

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皆既の少し前から昼なのに薄暗くなって、次第に現実感が剥離してゆきます。
その感覚のまま第二接触(皆既)になだれ込み、水平線はすごいことになってるわ、天頂に黒い穴があいているわ、肉眼でコロナは見えるわ水星も見えるわ(太陽に近すぎて滅多に見れない)と、時間あたりの出来事が多すぎる。

初体験ではない私たちも持てあます有り様で、翌日、次はカメラを持たずに来ようと省みました。マイクで録る方がいいかも。自由だし。十分思い出せるし。
 

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実は今回の旅で、日食以上に感じ入ったものがあって。それは南洋の感触でした。
こんなに穏やかな日、ばかりではないのだろうけど。どこまでも広がる鏡面のような海。こんな場所が、私たちの日常と同時にあるんだ。

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航海の折り返し地点、硫黄島。

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雨を落とす雲。

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まだ島影が見えない頃から、どこからともなく現れて、へさきを一緒に進むアホウドリ。

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何事もなかったかの様に沈んでゆく日食の日の太陽。すれ違いに南下してゆく遠洋漁業の船。トロットロの海。

東から寄せてくる夜。

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横浜港への帰着はこの38時間後です。
あの海域には今頃どんな時間が流れているかな、と思う。たぶん誰もいないんだろう。でも、地球の大半がそういう場所なんですよね。
 

by 2009/7/25