まちは将来世代に?

15-12-31 西村佳哲

神山町に住むようになって一年半がすぎた。出張先と東京と神山の多拠点型で、仕事と暮らしを重ねている。(写真はフリースクール・TOECで。秋の終わり頃)

誰のことかわからないと思うが、今年は真鍋さんや松岡さんとの出会いから始まった Google のプロジェクトが楽しいロングランだった。
くわえて林さんとの出会いもあり、こんな経営者がいたか⋯と面白がりながら モノサス という会社のサイトリニュアルの原案を考えた。(11月に公開)
あと昨年のちょうど今頃から取り組んでいた神山町役場のウェブサイトも、数日前にリニュアル公開された。(デザイン&エンジニアリングは前出モノサス)

その神山町と春先から、いわゆる地方創生の戦略策定を進めてきた。

本当は今頃、本を二冊書き終えているはずなのだけど、一文字も書けていない。そのための時間はすべて、この創生戦略づくりをめぐるアレやコレやに流れ込んでいった。

>神山町 まちを将来世代につなぐプロジェクト[PDF]

80ページ近い。でも分量に時間がかかったわけじゃない。個人名の書き下ろしテキストではないので、生み出してゆくプロセスにまあとにかく時間が要った。かなり手探りでもあって。

冒頭の「みなさんへ」から少し引用してみる。

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よく出来た計画書をつくっても、実行出来なければ意味がありません。そのようなことにならないように、「いまやるべきこと」と「いまできること」が、十分に重なる神山町の創生戦略づくりを心がけました。

「できること」の中で最も重要なのは、それをやる意欲と力を持ち合わせている人がいることです。「やるべきこと」の中でとくに重要なのは、あきらめずに、いま取り組めることを具体的に見つけ出してゆくことです。
その掛け合わせが、地域の可能性を膨らませてゆくのだと思います。(中略)

これから中学・高校、あるいは大学等に進んでゆく人たちは、この資料に書かれていることが、今後まちの中にどう実現してゆくか関心を持ってください。
そしてタイミングがあれば、ぜひその一角に参画してみてください。

より年上の大人たちは、いま神山に住んでいる人も、町外で暮らしている人も、移り住む先として関心を寄せている人も、ちょっと訪ねてみたいとお考えの方も、いつか還ってみようと考えている人も、ともに力を重ねてゆきませんか。

わたしたちがその取り組みを、夢中になって、楽しんでやってゆくことが大切だと思います。
若い世代が私たちの姿を見ているからです。
大人たちが柔軟に、いきいきと生きていることが、地域社会においてなによりの教育資源であり、ひとづくりの基礎を成すものではないかと思います。

本資料「まちを将来世代につなぐプロジェクト」は、そうした取り組みの実行プランとして書かれました。
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計画して終わりではないから、来年はこのつづきを楽しんで、励んでみようと思う。

30歳の頃に会社勤めを辞めてひとまずフリーランスになり、そのとき「プランニング・ディレクター」という肩書きをつくった。
「プランナー」という仕事に常々疑問を感じていたこともあり、「考えて、その先の制作もやる。つくりながら方向(direction)を探しつづける」ような仕事をしようという気持ちから、そんな言葉の組み合わせになったのだけど、またそれをやるのねという感じ。

ところで、この「まちを将来世代に⋯」のような仕事はなんて称したらいいんだろう? ちょっと困っている。

「まちづくり」という言葉はまるでしっくりこない。大南さんが以前「まちづくりでなく、まちが生えてくるというか⋯」と表現していたがその通りだな。「まち」は生きた状況であり、変化のただ中の結果であって、計画してつくる類のものではないと思う。

まあ「生えてくる」ための発芽・発育環境をつくることは出来るとして、じゃあなんて呼ぶの?
「まちそだて」? いや違うでしょう。「育てる」じゃない。いのちは自分で育ってゆく、というか必要なものを外部から取り込みながら、内在的な可能性を展開させてゆくのだもの。

そもそも「する/される」という動詞の活用形(能動態/受動態)では記述できない、互いの関係の中で起こっていることがあるっちゅーの。
現実は合気道でいえば、「飛ばされた」のか自分が「とんだ」のかわからないようなことだらけなのに、文法が追いついてないっつーの。

どう呼べばいいのか困っているのだけど、ともかく今年のこの仕事は自分にとってニューステージで、先をゆく先達から数多くを学びつつ歩んだ。
「先を生きている」と書いて「先生」となるわけだけど、この分野の先生たちは、僕の場合軒並み自分より年下の人たちで、それがまたいい。

創生戦略づくりを神山の隣人たちと探ってゆく上で、いくつもの補助線を提示してくれたのは、中でも海士町の阿部さんや豊田さんたち「あすあま」の歩み方です。本当に感謝している。進め方、悩ましさ、目指しつつあるところなど、まるで出し惜しみなく聞かせてくれた。ありがとうございます。

さて。充実した年にしましょう。

by LW 2015/12/31