ファシリテーション:伊勢達郎
ワークショップってなんだろう? ファシリテーションってなんだろう?ということを、ここ数年ずっと考えている。
用語がわかりません!という人は、wikipediaをご覧下さい。先に進ませていただきます。
コーチングとかファシリテーションとか、ビジネスの場にも応用できる(つまり職業にも出来そうな)対人・対グループの技法が人気だ。
そのトレーニング商品も多い。入門書は平積みだし、養成講座のたぐいはビジネス系も社会教育系も、山のようにある。
技法やスキルを軸足にした一般的なファシリテーター養成セミナーに違和感を表明して、まったく違う道筋からのファシリテーター育成を模索している人がいる。
四国・徳島の伊勢達郎さん。
トエック(TOEC)というフリースクールの主催者で、フリーキャンプの達人(と言われている。キャンプには参加したことがないけど、いつか行ってみたい)。
2002~04年にかけて、ワークショップについて考え合うべく西田真哉・中野民夫・森川千鶴らの仲間たちと開催した全国教育系ワークショップフォーラムの第一回目に、伊勢さんはゲストの一人として来てくれた。以来、五年の付き合いになる。
その際のインタビューで、彼は「場に決定的な影響を与えているのは、ファシリテーターの小手先の技じゃなくて、その人の存在感だよ」と話してくれた。
存在感、器。
以前「自分の仕事をつくる」という本のために行ったインタビューの中で、ドラフトの宮田識さんが「僕は1人の前でも100人の前でも、同じように話せる人間でいたい」と語っていたことを思い出す。
ワークショップ中の伊勢達郎さん(2002)
で、その伊勢達郎流ファシリテーター養成講座こと「育ち合う場づくりセミナー」が、今年も開催される。
5/2~4の二泊三日。淡路島の青少年自然の家で。
→TOEC・セミナーページ
LWの西村佳哲も、二年前からゲストとして参加している。ゲストといっても講師というより、人前で勉強している感じだな。すごく学んでいます。
今年は最終回で、参加申込〆切は4/10。定員50名で、本日4/7時点の申込数は29名。
僕らゲストは参加者数が少ない方が楽しめるのだが(濃くなるから)、面白い人が集まるにこしたことはないので、ここでも告知をしてみようと思った。
ファシリテーションという”なにか”に興味のある人は、このGW、淡路島に遊びにいやちがう勉強しに来てみませんか?
この下に、伊勢さんの最新インタビューを転載します。インタビュアーはトエックの渡辺さん。人の器と、場の話。学ぶこと・教えること、グループをつくり育てることに興味のある人には、琴線にふれる話が多々含まれているのではないかと思う。
伊勢さんがワークショップで使うウクレレ。ときどき一緒に歌いたがる。正直に言うと、場の雰囲気で歌わせ「られる」のは苦手だが、伊勢さん自身は好き。
──(前略)「育ちあう場づくりセミナー」。毎年、参加者した人には好評だけど、外からは「何を学べるのかよくわからない」という声もあるみたいですよ。
伊勢:学べるのは「自分流ファシリテート」と、その「自分流ファシリテート」をこえてゆくことだよ。
──即答ですね。
伊勢:このシリーズの前におなじく三年間やった「ザ・ファシリテーション・セミナー」は、巷のファシリテーション講座へのアンチテーゼやった。
世の中の多くのファシリテーション講座の内容は、だいたいがスキル・トレーニング。歯車になるような練習ばっかりやらされて、みんな知的に学んだつもりになる。
でも実際の現場にもどったら、全然いけてない状況に陥ることは十分予想できるし、その場の演習でもあきらかだった。そういうセミナーへのアンチからスタートしたわけ。
「育ちあう場づくりセミナー」は、その発展系やな。
ファシリテーターはね、場に決定的な影響を与える存在です。とはいえ、場に何かを与えているわけでも、その場をすすめているわけでもない。
彼(ファシリテーター)がコトを起こしているわけではなく、起こしているのはプロセスであり、その場なんだよ。
そのことを、僕らも学んだよね。
セミナーでもアートでも同じ。「オレがやったら感動させられるんだぜ縲怐vって言うアーティストなんて、たいしたことないやん。
──「自分流」というと?
伊勢:学びたい人は、自分が持っていないものを手に入れたがるし、自分の中の武器や鉄砲やを一生懸命みがきたがる。
でもそうじゃなくて。欠点だと思っていることも自分の宝物で、それを受け入れることで、そのことも使いこなせるようになる。持ち味を大事にしながら、ちゃんと場にいることができるようになるんだよ。
──…ファシリテーション・上級者編、なんでしょうか?
伊勢:気になってるんだよね。そう思わないで欲しい。基礎講座なんて吹っ飛ばして、まずは滝に打たれましょうと言いたい。共感からはじめましょう、って。
気づきとか出会いとか、そういうところから。
自分が持っていないものじゃなくて、持っているのに気づいていないこと、使えていないことを探る。向かうベクトルが違うんだよね。
──素敵だと思うファシリテーターのやり方をメモしたり、真似たりするのは意味がない?
伊勢:いや、それは散々すればいいと思う。偽者でも何でもね。1000本ノックみたいなもので、そういう練習も必要で、それはそれでやればいいんよ。
あんなふうになりたいと憧れて、知らず知らず口調が似てきたり、同じ様なことをやってもいいと思う。
でも、自分じゃないからな。それでは足らないわ。
その全く逆の方向から、自分のファシリテーションに迫っていくことができるやん。ファシリテーションと自分の人格は、切り離せんのだから。
自分の器。器を大きくするとかいう話じゃない。自分がその器を、丁寧にちゃんと大切に扱うかどうか。要は存在だから。
自分の存在を大事に扱わない人は、絶対に人の存在も丁寧に扱わないから、おのずと操作的になる。こんなのダメ、こうした方がいいって、人に対してなる。自分を否定し、欠損しているものを足そうとしてる人は、他者に対しても必ずそうやん。
たとえちっちゃな器でも、その大きさを知り、たとえちょっとしか入らんでも、それを慈しんでね。
そういうことを満喫できるような方向、いのちの方向へ向かえるなら、他者に対してもそういう風に向いていけるやん。
そうなると、大きいとか小さいといった比較まで変わってくる。大きいからいいとか、小さいからまずいとかじゃあないんだよね。
──そのことが学べる?
伊勢:学ぶチャンスはある。高飛車に聞こえるかもしれないけど、それが事実だよね。だって学びは、学ぶ側の話だもの。
でも、その人が今の必要とする部分にフィットするものが必ずとどく。
──このゲストの方々を選んだ理由は?
伊勢:松木正さん、佐藤道代さん、山北紀彦さん、西村佳哲さん。僕の手ごたえかな。この人なら、って感じ。そういう質をもっているだけじゃなくて、生の手ごたえ。
TOECの健やかな部分を上手く抽出して、スパイスというか触媒というか、化学反応の起きるような人をゲストに招いて、興味関心のある人たちが集まって。
こんなこと、そう再々出来ることじゃない。再々やってたらつまんないな。ご馳走は一回でいい。〈おわり〉
というわけで、セミナーのお問合せは、→TOEC・セミナーページまで。
〆切は4/10ですが、この分だと少しのびるかも。いや急に定員に達するかも。こういうのって、わからないんだよね。(西村佳哲)
by 2007/4/7