J・マイヨール:ある潜水時間の砂時計

1976年11月23日、ジャック・マイヨールという人間がイタリアのエルバ島沖で、人類で初めて水深100mを越えるフリーダイビングの記録を樹立しました。

これは、その潜水時間をしめす砂時計です。

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木枠の材は栓(セン/北海道産)。白い木地に白い砂の組み合わせ。

この砂時計を逆さにして「挑戦!」と息を止める人がいます。
が、この時間の長さよりも、彼はこの間なにをしていたのか。どこへ行っていたのか。

マイヨールはただ呼吸を止めていたのではなく、100mの深海に行き、生きて帰ってきた。
それは、いったいどんなことなのか?

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潜水直前。船のプラットホームに腰掛け、呼吸を整えるマイヨール。「イルカと海へ還る日」(講談社)より

 
海面から数メートル潜ると、水温は急に冷たくなります。その下の深い海へ。
50mも潜ると海水面の明かりはほとんど見えなくなり、周囲は青一色の世界になるそうです。

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スキューバの規定の最大深度は65m。マイヨールはその先へ潜る。「イルカと海へ還る日」(講談社)より

空気の入った缶は、早くもこの深度でペシャンコに潰れる。
さらに80m・90mの深度へ。
最後に水面で吸った空気は1気圧。彼の身体は巨大な水圧に押しつぶされる。あばら骨を残してお腹は大きくへこみ、まるで深海魚のような姿形になる。

水深100m近くの水温は10度に近いはず。その冷えきった世界に着いたマイヨールは、両肩に海全体の重さを感じるそうです。
同時に、海と身体が溶ける感覚を味わうとか…。
 

映画「グラン・ブルー」にも描かれたマイヨールとエンゾの競争が激化した1970年頃、世界水中連盟(J.クストー等が結成)は、フリーダイビング(ノーリミットと呼ばれる種類のもの)をスポーツとして認めない方針を決めました。
競争が加熱する中、危険性が高すぎると判断して。

100mの短距離走や、上に100m登るのとはわけがちがう。マイヨールの言い方を借りれば、私たちはこの両肩に、大気全体の重量を受けて生きている。私たちは空気の底で生きている。

海の底へ潜ることはその身体に、さらに海全体の重みを加えてゆくことです。
あるところまで潜れても、さらにもう1m潜ったら。あるいはその次の1mで胸はつぶれるかもしれない。

水深100mの世界は、本来人間が存在できる場所ではない。この砂時計をつくりながら、そのことの凄さを僕らもはじめて理解しました。

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潜水前の船の上。マイヨールは船のデッキで呼吸法の最中。「イルカと海へ還る日」(講談社)より

 
ある日、地中海に浮かぶボートの縁から一人の男が海中に姿を消し、100m潜って浮上してきた。
文字にしてみたらそれだけの話ですが、それはわずか数分間の人類初の大冒険だった。

時間はどこにも等しく流れているようで、その重みや密度は異なります。
1976年のこの日の同じ数分間、私たちはどこで、どんな時間を過ごしていたかなと思う。
 

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In this time/イン・ディス・タイム
ある潜水時間の砂時計
(ジャック・マイヨール)

・砂時計 W:85×D:45×H:130mm
・木枠 栓/セン
・革シート 130mm角
・砂 プラタリー(自然砂/微細な黒粒が少し混じります)
・小さな読み物付き

・フレームデザイン monokraft(清水 徹、勝又 健)
*monokraftは家具づくりの二人組み。リビングワールドの砂時計シリーズには、彼らのフォトフレームのデザインを使わせていただいてます。(製造は別の工作所に依頼)

価格:11,880円(本体価格11,000+消費税)
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by 2007/6/30