10/20 橋本久仁彦さんと

大阪 千代崎、フェンスワークス

2014-10-21 西村佳哲

奈良のフォーラムと本づくりの道中報告。二人目に会ったひとは橋本久仁彦さん。穂高の帰りに大阪で一泊して、インタビューの時間を持った。

告知ページのプロフィールにはこう書いた。

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橋本久仁彦 はしもと くにひこ
カウンセラーであり、非構成的エンカウンターグループなどの場づくりを手がけるファシリテーター。「きく」ことに関する西村の師匠筋の一人でもある。
人間疎外的な方向に整いやすい組織内のコミュニケーションを、一人ひとりの実感と、互いの体温を損なわないかかわり合いとして実現してゆくのが夢。その現場にこの数年居合わせてきた。
最近は若い仲間たちと、「きく」ことを軸に土地を旅する仕事を重ねている。[写真:Sanada]
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『自分をいかして生きる』を書いていたとき(今から6年くらい前か)、東京に来ていた橋本さんを深夜のカフェに連れ込んで、最終段階の草稿を最初から最後まで、目の前でページをめくりながら読んでいただいたことがある。
よく付き合ってくれたものだな、と思う。

穂高養生園で毎年、七泊八日の非構成的エンカウンターグループもご一緒してきた。今年で8年目。

Photo: Hiroki Sada

考えてみると自分のこの10年は、橋本さんと歩んでいる。
今月出版された『かかわり方のまなび方』の中でも彼は絶好調だ。とても気に入っているくだりがあり、以下に転載させてください。

──橋本さんご自身は、人間をどんな生き物として見ていますか?

橋本 パッと浮かぶのは「よくなりたい生き物である」という言葉ですね。それは今、ここにいる人たち全員にすぐ観察できます。全員、よくなろうとするプロセスの真っ最中にいると思います。ほぼ24時間その衝動の中にいるんじゃないでしょうか。
(中略)
方法はそれぞれ違うわけです。たとえば、ピアスの穴を開けるなんて僕はとても出来ませんが、それも「よくなろう」とする動きだと見ています。

──より、生きていることに近づく、ということですか。

橋本 はい。「よくなる」とは、生命としてよりハッキリと存在することだと思います。

 そしてそれを自分ですることだと思います。ピアスにせよ自傷にせよ、誰かに言われてその通りにやるのは嫌なんですね。みんな自分の道を自分で完遂しようとしていて、自分の手続きで生きたがっているように僕には見えます。

──それはたとえば、「人間は成長したい生き物である」というのとは違いますか?

橋本 「成長」という言葉は、最近ちょっと使いづらいですね。含まれている概念が邪魔な感じがします。

 たとえば心理療法の世界には「成長グループ」と呼ばれる手法があって、そこでいう「成長」は、よりオープンに相手の感情を感じられるようになり、嬉しいとか辛いといった感情を発言できるようになって、誰か寂しそうな人がいたらそこで肩を抱き、みたいな。特定の成長モデルみたいなものがあらかじめあって、そうなった人を見て「君、成長したねー」とか言うわけなんですけど、僕にはちょっと違和感があります。言った途端、同時に未成長のものが設定されてしまう。出来ていない人は成長していないことになる。

 本来、ファシリテーターから「あなたよくなったですねー」「感情が出ていて人間ぽいですよー」と言ってもらうような、他人から基準をもらうことではないだろう、という意味です。

──では「よくなる」ことは、「一致する」ことには近いですか?

橋本 近いです。自分の内側との一致ですよね。なので自分がよくなったかどうかは、自分だけが知っているはずです。

 ここは重要なポイントだと思います。周りの人たちがいくらその人の成長を素晴らしいと褒めそやしたとしても、その人が「いい」と思っていない限り、その人の中に一抹の不一致感がある限り、成長でもなんでもない。それは適合か適応か妥協だと思います。

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ここで橋本さんは「よくなりたい生き物である」という言葉で、本人の人間理解を語っている。

が、先月のエンカウンターでは「よくなりたい」を訂正していた。「(なにかを)求めている」はどうか?と訊いたところ、植物モデルではシックリ来るけれど、人間についてはそうとも言い難いという。

で、そのときの結論は「いようとしている」になった。「人間は〝いよう〟としている」。
つづきは1月のフォーラムで。

お申込みは150名に迫ってきました。Peatixの設定上、一度申し込んでいても、3日以内に支払い手続を済ませないと自動的にキャンセルになってしまうようなので、「申し込んだ」気になっている人がいたら注意してください。

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次のインタビューは内野加奈子さんと。来月、高知に向かいます。

by LW 2014/10/21