ニューヨークの鳩

17-01-01 LW

以前クライスラービルの屋上から、高所恐怖症ではないけれどヒヤーッとした気持ちでフェンスに近づいてニューヨークの街並みを見下ろしていたら、どこかから飛んで来た鳩がその向こうにとまって、屋上の縁を「ポッポッー」と歩いてゆく。縁の向こうは高さ282メートルの中空です。

地球上のすべてのものは、重力で地表面にくっついている。
空気もそうだし、浮かんでいるように見える雲も、水蒸気が温度差等で姿を変えているだけ。

翼を持つ生き物にも重力はかかっていて、羽ばたきがとまれば、地面につくことになる。けれどそれまで生きている世界は、常に地面にくっついているわたしたちとはまるで違う。

宇宙で暮らすようになると、人間の空間認識はこれまでの二次元的なものから、三次元的なそれに変わるだろう。
近似的にはスキューバ・ダイビングでも経験できる。
けど、もし三次元的な環境が基本となったら、印刷物やノートのような平面的な媒体では記述したり、共有しきれないことごとを僕らは体験してゆくと思うのだけど⋯⋯。

空を見上げていたら、高所が怖くもなんともなさそうだった鳩のことを思い出し、いまここに戻ってきました。
わたしたちも暮らし方がかわり、以前と同じ世界にはいない。でもともかく一所懸命に生きています。

今年もよろしくお願いします。

リビングワールド 西村佳哲・たりほ

by LW 2017/1/1