お薦め!の本・秋の16冊

10/6の青山ブックセンター・トークイベントに用意していた、「お薦めの本」のリストを公開します。

どれも僕の中で『自分をいかして生きる』に関連する、ないしその柱を成している一冊です。この秋に読む本を探している人、宜しければどうですか?
 

『君たちはどう生きるか』
吉野 源三郎/岩波文庫思想や表現に圧力がかかり始めた、ひと昔前の日本で書かれた本。次の世代に対する夢や願いで溢れている。元IDEE(現CLASKA)の大熊健郎さんに薦められて、読んで、良かった。コペル君という男の子と叔父さんの関係で進む、読みやすい寓話的なつくり。
 
『愛するということ』
エーリッヒ・フロム/紀伊國屋書店何度読み返しても内容を明確に思い出せないのだが、読んでいる最中はやたら頷いている(賛同・納得している)自分がいる本。書かれていることが大きすぎて、僕のキャパシティを越えているのかも。何度も読み返すだろう一冊。
 
『影との戦い―ゲド戦記』
アーシュラ・K. ル=グウィン/岩波書店語る言葉を持ち得ません。まだの人は、ぜひ!
 
『パワー(西のはての年代記 3)』
アーシュラ・K. ル=グウィン/河出書房新社自分を通じてあらわれる他人の力。どこまでが自分なんだろう。また、そもそも「力」とはいったい何なのか。ゲド戦記で個人の統合をめぐる旅を書いたグウィンが、その個人を動かす動力をめぐって描き出した冒険譚。
 
『イームズ入門』
デミトリオス・イームズ/日本文教出版レイがまとめた『Eames design』を筆頭に、イームズ夫妻の成果に関する本はいくらでもあるけど、彼らがいったいどんなふうに働いていたのか、その断片をふんだんに垣間見れるものは、この本の他にあるんでしょうか。ともに働いた無数の人々へのインタビューを重ねて、孫のディミトリオスが紡ぎ上げた一冊。私は読みながら泣きました。翻訳チームに感謝!
 
『自分の中に歴史をよむ』
阿部謹也/ちくま文庫歴史学の道へ進み始めた若き阿部さんが見ていた恩師たちの有り様に、背筋が伸びる思いがします。どんなことでもいいから、一人ひとりが「人類を代表するような気持ち」でそれぞれの仕事を重ねていったら、さぞかし面白い社会になると思う。
 
『私の個人主義』
夏目漱石/講談社学術文庫夏目漱石が学習院大学で行った講演「私の個人主義」を再録。ここで彼が語っている「自己本位」に僕も賛成です。自己中心的という言葉は批判的に使われることが多いけど、中心を自分の中に持たない人間の、一体なにを信用するというのか。
 
『語るに足るささやかな人生』
駒沢敏器/小学館文庫アメリカのスモールタウンを車で訪ねてまわった、まるで小説のような旅のエッセイ本。「古き良きアメリカ」という言葉がありますが、アメリカのそういう無垢な部分の泣けてくるような誠実さはいったいなんでしょう。ある町で駒沢さんが出会った、小説家希望の女の子の言葉に、僕も胸を射抜かれた。
 
『春になったら苺を摘みに』
梨木果歩/新潮文庫梨木さんの作品の中では小説の『家守奇譚』と肩を並べて好きな、こちらは随筆集。彼女がイギリスで下宿していた(師事もしていた)某夫人との日々。特に湖沼地帯への旅で彼女が泊まる、クェーカー教徒のホテルの話の空気感がいい。「誠実なひとり言」として書かれるエッセイの、類い希な好例の一つだと思います。
 
『軽い手荷物の旅』
トーヴェ・ヤンソン/筑摩書房ムーミンの作者トーヴェ・ヤンソンによる、大人のための物語の数々。短編集。画家である祖母の誕生日の贈り物をめぐって悩む、若いカップルの話に感じ入るものがある。世界に対する初々しさや、憧れと逡巡、「たまらない」気持ち。祖父江慎さんによるブックデザインも素晴らしい仕事っぷり。
 
『よあけ』
ユリー・シュルヴィッツ/福音館書店(世界傑作絵本シリーズ)「世界でいちばん好きな絵本を一冊紹介せよ」と問われたら、僕は迷わずこの本を指します。

『旅をする木』
星野道夫/文春文庫星野さんの文章は、サンデグジュベリのそれと似ていると思う(たとえば『人間の土地』など)。どちらも世界の果てに出かけて、そこで一人立ち止まって、本人以外の地球上のすべての人間にむけて書かれた手紙のよう。透明で、一人でポツンとしているけど、淋しくない。

『神話の力』
ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ/早川書房ルーカスがスターウォーズの脚本を書く際に強い影響を受けた『千の顔をもつ英雄』等の著者、神話学者のキャンベル。この本で彼は、「みずからの至福を生きる」ことをくり返し歌いあげている。対談形式の本のいいところは、考えながら読みやすいこと。
 

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『ホエール・トーク』
クリス・クラッチャー/青山出版社「とにかくこれを読んで!」とみんなに渡したい本、と訳者の金原端人さんから頂戴し、本当に読んで良かった一冊! 同じく「とにかくこれを!」とすべての友人に渡したい。実際、何度もプレゼントした。
 
『大きな耳』
W.アラジン・マシュー/創元社最後の章「大きな耳」は『自分の仕事をつくる』の底本のような存在。音や音楽をめぐるワークブックですが、それらに興味のない人にも薦めたい。翻訳の品質も素晴らしく、水のように読みやすい一冊です。
 
『木のいのち木のこころ』
西岡常一/新潮文庫自然物や自然の理に、全身でぶつかって生きている人は、大事なことをおのずと知っているものだな。全力を投じて働いたり・生きる前に、うまいやり方や、失敗のない処し方を本やレクチャーなどから得ようとするのは、本当に遠回りなことだと思う。
 

by 2009/10/8