Feb 14, 2021

大晦日に戻ってからずっと神山で働いていた。ここ5年ほど、9割方は神山の仕事をしている。「まちを将来世代につなぐプロジェクト」がそれで、町役場と一般社団法人(神山つなぐ公社)を立ち上げ、その中で集合住宅やらなんやら、いろんな開発に携わってきた。

下図は、その集合住宅プロジェクトのほぼ最後の建築物「鮎喰川コモン」。昨年11月から運用が始まり、オープン前の記録映像も公開された。

「まちを将来世代につなぐプロジェクト」の全体的な目標は「まちを〝世代交代の可能なまち〟にしてゆく」こと。いろいろあった5年間を振り返ると、「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」(魔女の宅急便)という気分。

機会として国の地方創生が活用されているので、5年が一区切り。1期(2016〜20)の戦略づくりには中心的に、というか自分を全投入するような感覚だったが、2期(2021〜26)の策定は30代を中心とした若い世代がとりまとめて、推進体制の中では世代交代が進みつつある。ある「状況」を目指す取り組みなら、プロセス自体がその状況を実現している方がいい。

20〜30代の〝働き方の研究〟や〝ファシリテーションの探求〟が山あいのまちに投じられるなんて、もちろん考えていなかったけど、こうなることは知っていたように思う。

16年前、このまちのNPOからウェブサイトづくりの相談をもらって、初めて訪れたとき、理由のわからない緊張を感じていたのをよく憶えているし、6年前に家を借りて暮らすようになってからは、まちで会う人の複数名に既視感があるというか、正体不明の親しみがあるというか。「いちど会ったことがある?」と感じさせる人が多い。運命を生きてるってことか、と思っています。

残り1割の個人の仕事では、2/6に「とびらプロジェクト」のフォーラムがあった。

これは東京都美術館と東京藝術大学が10年ほど取り組んできた「美術館の社会的機能を拡張する」試みで、前川建築設計事務所が手がける都美館のリニューアル工事(2010〜12)を経てスタート。その基礎講座の一部を担当している。

息の長い取り組みになっていて素晴らしい。しかもいきいきとしている。「NPOの活動でよい成果を出すには、パワフルな事務局が必要」と説いたのはドラッカーでしたっけ?『非営利組織の経営』あたりに書かれているんだっけな?

「とびらプロジェクト」には常時100〜120名のメンバー(「とびラー」3年任期)がいる。その中で、年間140ほどの多様なプロジェクトが、離合集散的に生まれている。

事務局にあたる都美2階の「プロジェクトルーム」メンバー(主に女性たち)の働きぶりは、本当に細やかで、暖かい。組織や地域の中に、有機的な活動が生まる状況をつくりたい人たちは、彼女等から学べるものが多いんじゃないかな。2年前に書籍『美術館と大学と市民がつくるソーシャルデザインプロジェクト』も出版されている。

別件で、先週あるデザインカンパニーからヒヤリングの相談をうけ、オンラインで話を交わした。「組織の創造性」をめぐるあれこれ。途中「ルーティンワーク」の話になった。

組織には「ルーティンワーク」も「プロジェクトワーク」も、どちらも欠かせないと思っている。自分個人の仕事を眺めても、その両方が同時にある。創造性を欲するあまり発想が極端になって、ルーティン側で力を発揮してきた人たちが「自分たちはどうすればいいの?」と感じ、元気がなくなってしまうようなマネージメントは望ましくない。

ルーティンワークは、ただ「現状維持」でつづけていると必ず落下してゆくので、常に上向きの揚力のような力をかけつづける必要がある。同じような内容について。日常的に。だから難しいんだよね。でも日本人には気質的に向いている部分も多々あり、それが戦後の経済成長も支えたと思う。

最後の方で経産省の職員さんから「そのルーティンワークがロボットやAIに代替されてゆく時代をどう考えればいいのか?」と訊かれたが、あまりいい答えが浮かばなかった。

二日三日経って、「そんなこと考える必要あるのかな?」とも思う。マスの扱いを考え、所得倍増やら1億総中流やら、市場誘導を行った国策の果てがいまの社会だ。みんなすっかり消費者化して、起業数は減り、空き家は増え、親はモンスターチックになり。

個々人の人生を国が考えるより、めいめいが自分で考えたり、試してゆける環境を、微に入り細に入りつくってゆく方がいいんじゃないかな。

まず最初に従業員の給与における税の「天引き」制度をやめた方がいいと思う。そうだ、確定申告に手を付けないと!

 

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