Oct 7, 2021

6年ほど取り組んできた神山の仕事を辞め、追って町も離れることにした。心の整理も兼ねて、すこしその前後左右を書いてみようと思う。

具体的に書くと、まず8月末をもって神山つなぐ公社を辞めた。そして2014年から2拠点居住の軸足を置いてきた神山町を、来年の5月末までに離れることにした。

理由はいろいろあって、主たるものとしては東京の家族(親や兄弟)のことが大きい。

あと仕事のことも。ここ6年ほど理事としてかかわってきた「一般社団法人 神山つなぐ公社」は、自分が町に設立を提案し、立ち上げにもかかわった組織ではある。けど自分の会社ではない。いわば公器なので、いつまでも働きながら居座っているわけにいかない。

いまこうして書きながら大阪の編集者・江弘毅さんの顔が浮かんだ。流れで岸和田市の公式サイトを見ると、だんじりを曳く「青年団」は25歳くらいまで、舵を取る「組」は35歳くらいまで、そのまとめ役にあたる「若頭」は45歳くらいまでで、町全体を仕切る「世話人」は55歳くらいまで。あとは相談役や参与、とある。

だんじりはともかく(まるで関係ない)、3年ほど前から「公社を離れるとしたらいつ?」と悩んでいたのだけど、最近「いまだな」と思えたので、メンバーと話し、その形を取らせてもらった。

「いま」と思えた理由には、やはり〝世代交代〟の視点が大きい。神山つなぐ公社は、神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクト」を実践してゆく組織で、名前のとおり〝世代交代〟を主題にしている。

「まちを将来世代につなぐ」ことは、端的に言えば「まちを〝世代交代可能なまち〟にしてゆく」ことだ。それが多くの地方で、というか家も、企業も、国政でも、この社会全体でうまく出来ていなくて、人と物事の循環が滞って久しい状況が閉塞感を生んでいると思う。

商店街の活性化であれ、公立高校の魅力化であれ、関係人口のなんであれ、その取り組みを通じて「地域を世代交代出来るようにしてゆく」という意識にピントが合っていないと、イベンタリーな試みに終始してしまいやすいんじゃないかな。

国の旗振りによる地方創生は5年事業で、第1期はこの春に終わり、第2期(2021〜2025年度)に入った。先の4月が一つの節目で、町役場から公社に出向していた代表理事も交代し、新しいメンバーが来て10歳若返った。平均年齢はぐっと下がった。

この春から初夏にかけて自分は役場総務課の広報担当(この彼も若い)と、町が隔月で発行している自治体広報誌の見直しに取り組んでいたのだけど、その中で先月から、大阪や東京あるいは徳島市など、いまは町の外で学んだり働いていたり、人生の開拓真っ最中の在外若手のミニインタビューを載せてゆく連載も始まった。
「まちの外で生きてます」というタイトルで、ページ後半は町内の中学生とのQ&Aで構成されている。

この企画は、いま大阪でモリモリ働いている神山出身の若手とのお喋りから生まれた(オンラインで。コロナ禍の副産物ですね)。現在2本目の準備が進んでいるが、制作や編集は彼を中心に、同じく町の外にいる20〜30代数名がロゴもつくって、LINEで楽しげに交わしている。

自分がこの町に来てまだ間もなかった約6年前に出会い、いくつかのプロジェクトを一緒に手掛けてきた二人の若い大工さんがいる。その彼らもいまではどちらもお弟子さんを取り、街角の現場で堂々とした働きぶりを示していて、すごく頼もしい。

直接的にかかわった動きに限らず、〝世代交代〟はいま出来るところから始まって、次第に流れになってきていると思う。
それは神山つなぐ公社でも同じ感じで、かつ向こう5年間の国の予算も付いた(地方創生交付金。春先の一次募集は落ちたが、二次募集を経て7月に採択された)。そして先にも書いたとおり、年配の者がいつまでも幅をきかせているべき場所じゃない。

8月末に公社を離れた背景にはそんな流れもあって、残務や引き継ぎが11月末までつづくが、この数年取り組んできた神山の仕事はそこで終了です。

「20年ぐらい投じないとだめだよな」と思いながら始めたけど、こんなふうに終わるんだな。一個人の人生で扱いきれないものは、法人格とか、ライフスパンの長い別の生命体に担ってもらうのがいいんだろう。

公社の仕事は終えても、神山にはいればいいし、暮らしてゆけばいいのに?と思う人がいるかもしれない。

自分も6月頃まではそのつもりで、家を建てようとも考えていた。けど、あらためて親や家族のこれからを考えると、もう少し彼らの住まいがあるところ(東京)に出やすいところへ移っておく方がいいという判断になった。
具体的な行き先はまだ決めていないので、どうなるかな。なるようになると思う。

でも神山の日常のよさへの名残惜しさはある。それについては、明日にでも書いてみようと思います。

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