Dec 26, 2022

InstagramのTLに、建築家の安宅研太郎さんが撮った週末のクイーンズメドゥ・カントリーハウスの一場面が流れてきた。年末恒例の餅つきのあとの、贈答梱包作業の様子。

別の人から送付先の確認メールもあった。お餅は数日後に届き、年末年始に美味しくいただけるだろう。ありがとう。初夏にワークショップで遠野に寄ったとき、苗を植える準備を手伝った餅米だな。(下はその滞在の一場面。食事前)

20年と少し前に、ヨーガン・レールさんのインタビューをする機会があった。そのとき彼は服や家具づくりの話をしながら、「本当はこれ以上モノを増やしたくない(この世界に)」「自分が憧れる職業はダンサーやシンガーだ。彼らは経験をつくり、モノを残さない」と語っていて、本当にそうだな…と思った。

約10年前の震災のあと自分も「人の持ち物を増やしたくない」「暮らしは身軽な方がいい」「いま足りないのはモノじゃなくて、時間と空間だよな」という気持ちが強くなり、振り返ってみるとこの10年は集合住宅を開発したり、あとワークショップをよく開いている。
ワークショップは、本人が持ち歩くことのできるポータブルな経験を一緒につくる作業で、やっていて本当に矛盾がない。自分には納得が深い。

 
夏に遠野でひらいたワークショップに、パーソナル・トレーナーの仕事を重ねてきた男性がいた。そのあと相談をもらい、彼の仕事を紹介する冊子の文章の手直しや、ウェブサイトに載せるインタビューを少し手伝っている。
流れで彼のトレーニングというかボディワークも受け始めているのだけど、面白く感じていることがあるので少し書いておきたい。

最初のセッションで彼は私の身体を一緒に動かしながら、時間をかけて観察したあと、二つの簡単な動作を「しばらくやってみませんか」と伝えてくれた。以後、毎日朝と夜にくり返している。

面白いと思ったのは、その彼が「何回」とか「何秒」といった数をインストラクションに含まなかったことだ。このポーズを××秒とか、××セットといった、よくある指示情報が一切なく、面白がって後から訊いてみると「身体の反応を感じながら、本人が判断する方がいいから」と言う。彼は、健康や運動を大事にする人たちが、外から与えられる正しさに引っ張られて、結果的に本人の身体感覚から離れてしまいやすいことに疑問がある。で、そうしたインストラクションは意図的にしていないのだと聞かせてくれた。

同じような話を、クイーンズメドゥを設計した田瀬理夫さんもよく聞かせてくれる。「年に何度肥料をやるとか、剪定するとか、水遣りをするとか、具体的な数を入れた管理マニュアルをつくると、ただ書かれているとおりの作業を始めてしまう」「そうではなくて、植物の状態をみるのが大事。よくみればなにが必要かはわかる」と言う。

竣工時に彼がクライアントに提出する管理マニュアルの一行目は、「植物に愛情をもって接すること」だ。

なににせよ同じ話なんじゃないかな。知識や概念はもちろん不要ではないけど、観察や実感をより大事にして世界にかかわってゆくこと。ストレッチや植栽管理に限らず、たとえば料理にしても子育てや教育にしても、生命的なものにかかわる仕事はなんでもそうだと思う。

 
2月に遠野でワークショップをひらくことにして、いま申込みを受け付けている。田瀬理夫さんと『ひとの居場所をつくる』のリアル版。馬と人の、かかわり方の学び方。そしてフリーキャンプのような自習室。ワークショップは一緒につくるものなので、面白い人たちが集まるといいな。

真冬の遠野・Queen’s Meadow Country House、3つの滞在プログラム
https://note.com/lw_nish/n/ndf4d350a5e4d

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