Jun 14, 2024

最近、20人ほどの会社と50人くらいの会社に伴走している。どちらも創設期を経て次のステージに向かうところで、大事な局面に立ち合っていると思う。

ミーティングや合宿に参加している最中の自分は「この人たちがほぼ全世界」のような気持ちでいるけど、普段は別の仕事をしているし、でも彼らはその間もその会社を懸命に回しつづけている上に「回し方」つまり働き方まで模索しているわけで、第三者が口にしがちな「伴走」という喩えは言い過ぎでない? と思う部分がある。
とはいえ、折に触れて思い浮かべていたり、「今度こんな話も交わせるといいかも」と考えたり、目は追いかけているし横を走っている気持ちもある。そんな関係の会社(人々)がこの2年の間に増えた。

その一つに、ある大企業の3,000人ほどの部門がある。昨日その約30名の前で、自分が20代の後半に始めた働き方研究を振りかえりつつ、最近考えていることを聞いてもらう機会があった。約30年前に訪ねたパタゴニアの写真(上の写真を含む)を見ながらあらためて思うことがあったので書きとめておきたい。

パタゴニア(Patagonia)の本社はアメリカのベンチュラにある。ロサンジェルスから車で1時間ほど北上した海沿いの街で、サーフポイントが近い。

広報の女性が会社の中を案内してくれた。階段室に並ぶサーフボードは濡れていたし、受付の横の小さな掲示板には「今日の波 5 feet」という走り書きがあった。「入ってんだな(海に)」という感じ。
自分が訪ねたのは本『社員をサーフィンに行かせよう/let my people go surfing』が書かれる10年前だけど、「そんなふうに働いているんだろうな」と思いながら行き、そのとおりだった。仕事と仕事の対象が、あたり前のように連続している。

でもいちばん驚いたのは、会社に子どもたちがいたことだ。パタゴニアの本社には生後10週目から10歳までのスタッフの子どもを預かる保育所・幼稚園・小学校が併設されていた。

出産を機に女性スタッフが離職してしまうのが辛くて、まず保育から整えたという。後年、パタゴニアの日本支社長に在任していた辻井隆行さんとお会いしたとき「同じ環境を日本につくることも僕のミッションの一つです」と話していたが、いまどうなっているかな。

話をベンチュラに戻す。窓から庭を見下ろせば我が子が見える程の近さではある、けど保育所・幼稚園・小学校は「オフィスの中」にあるわけじゃない。フロアーは違う。でもフロアーにも子どもたちの姿はあった。

この子は学校の授業が終わってからここに来て、お母さんの机で宿題をしていた。お母さんは家族の誰よりも早く起きて一人で家を出て、4時には会社で働き始めている。いまは会議中だけどもうすぐ終わる。他の人より早く切り上げて、夕食の買い物をして帰り一緒につくって食べるのだ、と聞かせてくれた。いいじゃないか。

机と机の間の通路部分を、スケートボードを持った別の子が歩いていた。大人たちは普通に働いている。

そういえばパタゴニア本社を通りから撮った写真に、子どもを抱えるお母さんの姿が写っていたな。

子どもたちが日常的に会社にいるって、どういうことなんだろう。一言でいえばまず「男性社会ではない」ということか。

私が30〜40年前に働いていた某大企業には「家庭のことを仕事や会社に持ち込んではいけない」空気があったと思う。誰かの奥さんが急用で子どもと訪ねてきたり、休日出勤に子どもが付いてきていて終わり次第一緒に出かけるんだ、みたいなイベンタリーな場面ではもちろん寛容だしみな嬉しそうにしていたが、日常的にそれを受け入れる雰囲気はなかった。

で、その男たち(女性もいるけど)が会社でくり広げている「ビジネス」のことを考えると、江 弘毅さんが前に聞かせてくれた言葉を思い出す。

『みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?』より

なにごとも一概には言えないが、このことは私もよく感じてきたな。
どこか「ごっこ遊び」のよう。どこかで聞いたなにかを「仕事だから」やっている感じ。真剣さや切実さが不十分で、力だけやたらにある。
子どもは物事のくだらなさや、大人の本気度に敏感だ。近くにいたらぜんぶ見透かされてしまうんじゃないか。

あと話しながらもう一つ思い出したのは、「どんなことも7代先のことまで考えて決めなければならない」という北米インディアンの教えだった。部族長の話し合いの輪に一つ誰も座らない席を設けて、そこは「7代先のひと」に空けたまま話を重なることがあったとも聞いた。

たかだか数十年しか生きない自分たちの短期的な都合や事情で、大事なことを決めてしまわないようにする具体的な工夫がそこにあると思うのだけど、同じような作用が、同じ空間に子どもたちもいることで起きるんじゃないかな。
再びパタゴニアを訪ねる機会があればそこにも注目したいし、そんな目線で、会社や大人たちが働く空間を眺めてみたい。