Jan 13, 2025
日本科学未来館の3階にあった「インターネット物理モデル」の展示が、本日(2025年1月13日)に終了した。
これは「センソリウム/Sensorium」の活動が一段落した頃、Higraphの東泉一郎さん、GKTechの岩政隆一さん、未来館の島田卓也さん等が制作した、インターネットの通信の仕組みを物理的に体験する展示物だ。
私はかかわっていなくて、「すごいものつくってるな…」と傍で呆気にとられていた。


(写真はHigraphのサイトより)
「物理」モデルなので「パケット通信の理屈をどう表現するか?」という企画設計と同時に、転がってゆく球の重量と遠心力のバランスとか、レールの摩擦係数とか、解決しないと展示が成り立たない物理的課題が大量にあり、一つにはそれでもがいていたと思う。
確か岩政さんが「こんな仕事は何度もないんだよ」と、メンバーを鼓舞していたときがあった。
こんなふうに発見的で発明的で、純粋で、力を合わせて越えられるかどうかという仕事に取り組める機会は、一生のうちにそう何度もあることじゃないんだ。というニュアンスだった。
その岩政さんは別のとき、チャールズ&レイ・イームズが手がけた展覧会「Mathematica」(1961)に出展された「正規分布」の展示物の素晴らしさを、うっとりした表情で語ってくれて、私もうっとりして聞いていたと思う。

正規分布は、データが確率的に平均値のまわりに集積する現象を指す。
こうした表現。フリルや装飾が施された、そっちに目を奪われるデザインでなく、ある事実の美しさや驚きを「ありのまま」に伝えてくる仕事を、イームズたちは数多く形にした。たとえば「Powers of Ten」もそう。〝as it is〟というか。
私たち(センソリウムの仲間)はこの頃、「インターネットにどんなコンテンツを載せるか?」とか「その上でなにをするか?」といったこと以前に、World Wide Web(ワールドワイドウェブ)という仕組みそのものの出現に驚いたし、感動していて、20世紀が終わる前に人類がこんなものを創ったことに対する敬意をなにか具体的な形で示して返したい、という表現欲求が強かった。
振り返るように書いていると、誰かが亡くなったとかそんな話がつづいてしまいそうだけど、みんな元気で喜ばしい。岩政さんも定年で現場を離れて随分になるが、昨年登った山々の写真が毎年お正月に届く。
本日この世を退いたのは、未来館の「インターネット物理モデル」だ。こうした展示物は日々のメンテナンスあってのものなので、未来館の方々にも「おつかれさまでした!」と言いたい。
センソリウムから何年も経って、気がつくと、ウェブの制作現場にいる人々の大半は「インターネットでどんなビジネスが可能か」を四六時中考えている人ばかりで、インターネットという環境そのものに驚いたり感謝している人の姿は珍しくなった。「WWW」なんていう言葉も、もう誰も使わない。
けどコンテンツ以上に、環境そのものが奇跡的で面白い、という感覚が常にあります。